留守番をさせるとずっと吠えている、家具やドアを壊す、普段は失敗しないのに部屋で排泄してしまう——。こうした行動は、単なる「いたずら」や「しつけ不足」とは限りません。飼い主がいなくなることに強い不安を感じる分離不安が関係していることがあります。
執筆:圓尾 拓也(腫瘍科認定医・獣医学博士)
分離不安ではどんな行動がみられる?
分離不安の犬では、留守番中に吠え続ける、遠吠えをする、ドアや家具を壊す、トイレ以外で排泄する、部屋を行ったり来たりする、よだれが増えるなどの行動がみられます。飼い主が鍵を持つ、上着を着るなど、外出の準備を始めただけで落ち着かなくなる犬もいます。
特徴の一つは、飼い主が出かけたあと比較的早い時間から不安が強くなることです。ただし、留守番中に吠えたり物を壊したりする犬が、すべて分離不安とは限りません。若い犬が退屈して物をかじっている、外を通る人や犬に反応して吠えている、トイレトレーニングが十分でないといった場合もあります。高齢犬では認知機能の低下、排泄の失敗では泌尿器や消化器の病気が隠れていることもあります。
留守番中の動画を撮ってみる
分離不安を考えるうえで、とても役立つのが留守番中の動画です。スマートフォンや見守りカメラを使い、外出してからどのくらいで落ち着かなくなるのか、玄関を気にしているのか、外の物音に反応しているのかなどを確認します。
帰宅したときに部屋が荒れているだけでは、その原因までは分かりません。動物病院に相談するときも、留守番を始めてからの様子を動画で見せてもらえると判断しやすくなります。
叱っても分離不安は治らない
帰宅したら物が壊されていたり排泄されていたりすると、つい叱りたくなるかもしれません。しかし、分離不安による行動は、飼い主を困らせようとして行っているわけではありません。不安や恐怖によって起きているため、帰宅後に叱っても改善にはつながりません。
治療では「悪い行動をやめさせる」というより、一人でいても大丈夫だと少しずつ覚えてもらうことが重要です。犬が不安にならない程度の短い留守番から始め、落ち着いていられる時間を徐々に延ばしていきます。重度の犬では、長時間の留守番を繰り返すことで不安がさらに強くなることもあります。
薬を使うこともある
飼い主が玄関へ向かうだけでパニックになるなど不安が非常に強い犬では、行動療法だけでは練習が難しいことがあります。その場合には、動物病院で抗不安作用のある薬を併用することもあります。薬は単に眠らせるためではなく、不安を和らげ、一人で過ごす練習ができる状態を作るために使用します。
「いつも一緒にいたから分離不安になった」「甘やかしたから留守番できなくなった」とは限りません。留守番中の吠え、破壊、排泄が続く場合は、まずカメラで留守番中の様子を確認してみましょう。強い不安やパニックがみられる場合には、動物病院に相談してください。
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