犬が床やカーペットにお尻をつけて、前足で進むようにズリズリこすることがあります。一度だけなら、お尻に便や毛がついて気になっただけということもありますが、何度も繰り返す場合は、肛門周囲にかゆみや痛み、不快感がある可能性があります。代表的な原因は、肛門嚢のトラブル、寄生虫、皮膚炎などです。
執筆:圓尾 拓也(腫瘍科認定医・獣医学博士)
最も多いのは肛門嚢のトラブル
犬の肛門の左右には肛門嚢という袋があり、中に強いにおいのある分泌液がたまっています。通常は排便時などに少しずつ排出されますが、うまく出せない犬では分泌液がたまり、お尻をこすることがあります。お尻をしきりになめる、肛門周囲を気にする、魚のような強いにおいがするといった場合は肛門嚢が原因かもしれません。分泌物がたまりすぎると肛門嚢炎を起こし、さらに悪化すると膿がたまって肛門の横が腫れたり、皮膚が破れて出血したりすることもあります。痛がる、赤く腫れている場合は早めの受診が必要です。
寄生虫が原因になることも
消化管寄生虫でも肛門周囲に違和感が出ることがあります。特に瓜実条虫では、白い米粒のように見える片節が便や肛門周囲に付着することがあります。時間がたって乾くと茶色のゴマのように見えます。瓜実条虫はノミを介して感染するため、条虫の治療だけでなくノミ予防も重要です。ただし、「お尻をこする=寄生虫」とは限りません。便だけを見ても分からない寄生虫もあるため、疑わしい場合は便検査などで確認します。
皮膚炎やアレルギーにも注意
肛門周囲の皮膚炎、下痢による刺激、毛についた便、アレルギーなどでもお尻をこすることがあります。この場合は肛門だけでなく、足先をなめる、耳をかく、お腹や脇をかゆがるなど、ほかの場所にも症状がみられることがあります。また、肛門周囲にしこりや腫瘍ができて違和感を起こしているケースもあります。
お尻をこする行動が何度も続く場合は、「肛門腺を絞ればよい」と決めつけず、肛門周囲の皮膚、肛門嚢、便の状態などを確認することが大切です。特に腫れ、出血、膿、強い痛み、排便しづらそうな様子がある場合は、早めに動物病院を受診しましょう。
