犬が何度も排尿姿勢をとるのに、おしっこが出ない。出ても数滴しか出ない。このようなときは、尿道閉塞の可能性があります。完全に詰まると命に関わるため、翌日まで様子を見ず、すぐに動物病院へ連絡してください。
執筆:圓尾 拓也(腫瘍科認定医・獣医学博士)
犬の尿道閉塞とは
尿道は、膀胱にたまった尿を体外へ運ぶ通り道です。ここが結石などで狭くなったり塞がったりした状態を尿道閉塞と呼びます。少量は出る「部分閉塞」から、まったく出ない「完全閉塞」へ進むこともあります。
特に雄犬は、雌犬より尿道が長く、陰茎骨の周囲で狭くなるため、結石が引っかかりやすい傾向があります。ただし、雌犬にも閉塞は起こります。
主な原因
犬で多い原因は尿路結石です。膀胱内にできた結石が尿と一緒に流れ、尿道で止まると排尿できなくなります。ほかに、前立腺疾患、尿道や膀胱の腫瘍、炎症後の狭窄、外傷、血の塊などが原因になることもあります。
見逃したくない症状
何度も外へ行きたがる、排尿姿勢が長い、尿の勢いが弱い、ぽたぽたしか出ない、血尿、陰部をしきりになめる、排尿時に鳴くなどが初期のサインです。いきむ様子が便秘に見えることもあるため、「最後にいつ、どのくらい尿が出たか」を確認してください。
閉塞が続くと、膀胱が大きく張って強い痛みが出ます。さらに元気や食欲の低下、嘔吐、ふらつき、ぐったりするなどの全身症状が現れます。
なぜ緊急なのか
尿を排泄できないと、腎臓の数値やカリウムが上昇し、尿毒症や危険な不整脈を起こす可能性があります。腎障害や膀胱破裂につながることもあるため、完全閉塞は救急疾患です。数滴出ていても、閉塞の程度を家庭で判断することはできません。
動物病院で行う検査と治療
診察では膀胱の張りを確認し、血液検査で腎機能や電解質を調べます。尿検査、レントゲン検査、超音波検査などを組み合わせ、結石、前立腺、腫瘍など閉塞の原因を探します。
全身状態が悪い場合は、点滴や電解質異常への処置を優先します。そのうえで尿道カテーテルを通し、閉塞の解除を試みます。結石を膀胱へ戻して手術で取り出すこともあります。解除できない場合や再発を繰り返す場合には、原因に応じて尿道切開、尿道瘻形成、ステントなどを検討します。
家庭でしてはいけないこと
張ったお腹を強く押す、水を無理に飲ませる、人の薬を与えるといった対応は危険です。「少し出たから大丈夫」と考えず、尿が極端に少ない、何度もいきむ、痛そうな様子があれば当日中に受診してください。まったく出ていない、吐く、ぐったりしている場合は直ちに受診が必要です。
再発を防ぐために
結石が原因だった場合は、摘出した結石の分析や尿培養を行い、種類に合った食事療法や感染症の治療を選びます。飲水量を増やし、定期的な尿検査や画像検査で再形成を確認することも大切です。療法食は結石の種類によって異なるため、獣医師と相談しましょう。
▼ 尿が出ない、ぐったりしている場合
→ 緊急を要する飼い主様へ
▼ 血尿や排尿異常の原因として腫瘍が疑われる場合
→ 犬の膀胱腫瘍|血尿の原因?手術できる?治療と見通し
