ホーム > 腫瘍まとめ > 検査 > 細胞診(FNA)は逮捕かリリースを決める検査。「わかること・限界」
執筆:圓尾 拓也(腫瘍科認定医・獣医学博士)
「しこりに針を刺して細胞を採る検査(細胞診)」は、動物への負担が少なく非常に有用な検査ですが、万能ではありません。その精度と特徴を正しく知っておくことが、納得のいく治療への第一歩です。
1. 正確性はどのくらい?
腫瘍の種類によりますが、一般的には 80~90%程度の確率で「良性・悪性のあたり」がつきます。いわば、「犯人を逮捕するのか、リリースするのか」の一次判断を下すことができます。ただし、腫瘍のタイプによって得意・不得意があります。
• 得意(精度 95%~): リンパ腫、肥満細胞腫、メラノーマなど
細胞がバラバラになりやすく、針一本でも十分な情報が得られます。
• 普通(精度 80%前後): 乳腺腫瘍などの「上皮系腫瘍」
細胞同士の結合はあり、比較的安定して判定可能です。
• 苦手(精度 60~70%): 血管肉腫、線維肉腫などの「間葉系腫瘍」
細胞が腫瘍を支える組織(線維肉腫ならコラーゲン、骨肉腫なら骨組織)に埋もれているため、細胞の情報が不足しがちです。
2. 細胞診で「わかること」と「限界」
• わかること: 「炎症なのか腫瘍なのか」「がんの種類(推定)」「悪性度のヒント」
• わからないこと: 「組織の構造(根っこがどこまで張っているか)」
がん細胞の「顔つき」は見えますが、「周囲の組織とどう関わっているか」までは見えません。最終的な確定診断には、組織を塊で採取する「病理組織検査」が必要です。
3. なぜ、診断が難しいことがあるのか?
検査の結果、判断に悩むケースがあるのは以下の理由によります。
1. 剥離性(細胞の採れやすさ)の低さ
細胞がコラーゲンなどの網目に埋もれていたり(肉腫)、細胞同士が非常に強固に結合していたり(上皮系)すると、針で吸っても細胞が十分に離れてくれません。
2. 細胞不足による判定困難
核に異常が見えても、分母となる「細胞数」が少ないと、それが個体差なのか悪性所見なのかを統計的に判断しにくくなります。
3. 紛らわしい細胞(反応性細胞)の存在
炎症部位で組織を修復しようとする細胞は、がん細胞と非常によく似た「悪い顔つき」をすることがあり、専門医でも区別が困難な場合があります。
4. 血液による希釈
血管が豊富な腫瘍(血管肉腫など)では、サンプルが血液ばかりになり、肝心の腫瘍細胞が含まれないことが多いため精度が低下します。
4. 「誤認逮捕」「取り逃し」を防ぐために
細胞診で「非腫瘍」「良性」「悪性」のどれかがはっきりすれば、次の検査や経過観察のプランが立ちます。つまり、犯人を逮捕するのかリリースするのか決める事ができます。
もし判定が「グレー(不明)」だった場合、そのまま立ち止まってはいけません。「取り逃し」てしまいます。期間をおいて再度の細胞診を行うか、1 cmを超えて明らかに腫瘍が疑われる場合は、一歩踏み込んで「病理検査」へと進み、正確な情報を掴み取ります。
まとめ
細胞診は、治療の「最短ルート」を決めるための重要な指針です。しかし、「細胞診で100%わかるとは限らない」という不確実性をあらかじめご理解いただくことが、その後のスムーズな治療と信頼関係に繋がると考えています。
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獣医師 圓尾真理
獣医師 圓尾拓也
日本獣医がん学会 腫瘍科認定医1種(I種)
放射線取扱主任者1種
博士(獣医学)
エビデンスにもとづいた情報発信に努めます。
