フィラリア予防薬は、主に犬の体内へ入った直後の幼虫を、成虫になる前に駆除する薬です。
では、すでに肺動脈や心臓に寄生している成虫にも効くのでしょうか。
執筆:圓尾 拓也(腫瘍科認定医・獣医学博士)
予防薬の主な標的はフィラリアの幼虫
一般的なフィラリア予防薬は、蚊に刺されて犬の体内へ入った第3期幼虫や、皮下・筋肉内を移動している第4期幼虫に作用します。
幼虫が成長して肺動脈へ到達する前に駆除することで、フィラリア症の発症を防いでいます。
つまり、予防薬は、すでに寄生している成虫を治療することよりも、成虫をつくらせないことを目的とした薬です。
→ フィラリア予防
成虫は1回の予防薬では駆除できません
通常量のフィラリア予防薬を1回投与しても、肺動脈に寄生している成虫が、すぐに死滅するわけではありません。
「成虫にはまったく作用しない」というよりも、成虫駆除薬として使えるほど、速く確実に効くわけではないと考える方が正確です。
薬を飲ませた後も成虫は長期間生存し、その間に肺動脈の炎症や血管の変化が進む可能性があります。
長期間投与すると成虫が死ぬことがあります
フィラリア予防薬を毎月長期間投与すると、成虫が徐々に弱り、数か月から数年かけて死滅することがあります。
このように、予防薬を継続しながら成虫が死ぬのを待つ方法は、一般に「スローキル」と呼ばれます。
ただし、いつ成虫が死ぬのかを正確に予測することはできません。成虫が残っている間は肺や血管への障害が続き、死滅した虫体が肺の血管に詰まる危険もあります。
スローキルは第一選択の治療ではありません
スローキルは、体への負担が少ない治療のように見えるかもしれません。しかし、成虫が長期間寄生し続けるため、心臓や肺へのダメージを止めるまでに時間がかかります。
そのため、成虫感染が確認された場合は、犬の症状、寄生数、心臓や肺の状態を調べたうえで、成虫駆除、運動制限、抗菌薬、予防薬などを組み合わせて治療方針を決めます。
陽性犬にも予防します
フィラリア陽性の犬にも、新たな感染を防ぎ、血液中の幼虫を減らす目的で、獣医師の管理下で予防薬を使用します。
ただし、血液中にミクロフィラリアが多い場合は、投薬後に元気消失、嘔吐、呼吸状態の悪化などが起こる可能性があります。
フィラリア陽性が疑われる犬や、長期間予防していなかった犬には、検査を受けてから投薬することが大切です。
→ フィラリアの薬を飲む前に検査が必要な理由|予防前検査は何を確認しているのか
長期間予防していなかった場合や、去年の予防が途中で終わっていた場合は、余っている薬を自己判断で与えず、最後に投薬した時期を動物病院へ伝えてください。
まとめ
フィラリア予防薬は、主に成虫になる前の幼虫を駆除する薬です。
成虫に対しても長期投与で作用することはありますが、1回の投薬で確実に駆除できるわけではありません。
▼ 犬と猫の予防について
→ 予防まとめ