犬の心臓薬「ピモベンダン」とは?|心不全になる前から使う理由

犬の心臓病で処方されることの多い「ピモベンダン」。ベトメディンなどの商品名で知られています。心臓の働きを助ける薬です。

ピモベンダンは、心不全の発症を遅らせるだけでなく、心不全を発症した犬の生存期間を延ばす効果も臨床試験で示されています。

執筆:圓尾 拓也(腫瘍科認定医・獣医学博士)

心臓の収縮を助け、血管を広げる

ピモベンダンには、心臓の筋肉が収縮する力を高める作用と、血管を広げる作用があります。心臓が血液を送り出しやすくなり、心臓にかかる負担を軽減します。

代表的な使用対象は、犬の僧帽弁閉鎖不全症です。僧帽弁がうまく閉じなくなると、血液の一部が逆流し、心臓が徐々に拡大します。ピモベンダンは弁そのものを修復する薬ではありませんが、心臓の働きを助けることで、心不全の発症を遅らせたり、症状を改善したりします。

かつては血管拡張薬のエナラプリルや、強心薬のジギタリスなどを使っていました。現在ではピモベンダンが治療の中心となる場面が多くなりました。時代は変わったものです。

心不全になる前から使うことがある

以前は、咳や呼吸困難などの症状が出てから心臓薬を始めるイメージがありました。しかし現在は、症状がなくても、心臓が一定以上拡大した段階でピモベンダンを開始することが推奨されています。

僧帽弁閉鎖不全症のステージB2では、心不全の発症を遅らせる効果が臨床試験で示されています。一方、心雑音があっても心臓の拡大が軽いステージB1では、通常、薬による治療は推奨されません。

つまり、心雑音の有無だけでなく、心臓の大きさや病気の進行度を評価することが大切です。

心不全になった場合

肺水腫などの心不全を起こした犬では、ピモベンダンは治療の中心となる薬の一つです。ただし、肺にたまった水を直接取り除く薬ではありません。利尿薬や酸素投与などと組み合わせて治療します。

国内には注射薬もあり、口から薬を飲ませることが難しい場合などに、静脈内投与で速やかに治療を開始できます。呼吸が苦しそう、安静時の呼吸が速い、横になれないといった場合は、自宅で薬を増やして様子を見るのではなく、速やかに受診してください。

飲ませ方と注意点

通常は1日2回、約12時間間隔で投与します。一般的には食事の約1時間前に与えますが、製剤ごとの指示に従ってください。

副作用として、食欲低下、嘔吐、下痢などがみられることがあります。また、心拍数や血圧への影響にも注意が必要です。肥大型心筋症など、心臓の収縮を強めることが適切でない病気では使用できない場合があります。

定期的な評価

ピモベンダンは心臓病を治しきる薬ではありませんが、適切な時期から使用することで、心不全の発症を遅らせたり、症状を改善したりすることが期待できます。心エコーやレントゲン、呼吸数などを確認しながら、その犬に合った治療を続けることが重要です。

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