今回のガイドラインでは、痛みを「第4のバイタルサイン」として扱うという考え方が示されています。つまり、TPR(体温・脈拍・呼吸)にPainを加えて、TPR+Painとして日常的に評価していくということです。
疼痛管理を前面に押し出してます。
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執筆:圓尾 拓也(腫瘍科認定医・獣医学博士)
鎮痛薬を使わないという選択肢を与えない
特に印象的だったのが、
「鎮痛薬を使わないという選択肢を飼い主に与えることに、WSAVA Global Pain Councilは強く反対する」
という考え方です。
痛みを取ることは、希望するかどうかを飼い主さんに選んでもらうものではなく、獣医療として当然行うべきもの、という強い姿勢が感じられました。
痛みは動物病院だけでなく自宅でも評価する
痛みの評価についても詳しく書かれています。猫では顔つきや姿勢など比較的分かりやすい指標がありますが、犬では性格や不安、犬種などにも影響され、判断が難しいことがあります。
診察室だけでなく、自宅での動き方、寝方、散歩、階段、食事などを飼い主さんにも観察してもらうことが大切なのでしょう。
ブトルファノールの併用は注意
ブトルファノールやブプレノルフィンが動物病院で使われ始めた頃には、両者を併用することもありました。
しかし今回のガイドラインでは、作用の異なるオピオイドを組み合わせると効果が予測しにくくなるため推奨しないとされています。
ブトルファノールは鎮痛作用が比較的弱く短いこともあり、今後はブプレノルフィンを中心に考えてもよいのかな、と思いました。強い痛みではフェンタニルなどのfull μ agonistが必要になりますが、オピオイド同士の組み合わせには注意が必要です。
ステロイドは痛み止めではない
ステロイドは、NSAIDsより上流で炎症反応を抑えるため、強力な抗炎症作用によって炎症性疼痛を軽減します。
しかし、ステロイドそのものを「鎮痛薬」と考えるべきではないという記載も印象に残りました。
ドミトールのCRIという使い方
α2作動薬では、メデトミジンやデクスメデトミジンのCRIが紹介されています。
私はケタミンCRIは使っていましたが、α2作動薬を低用量で持続投与して鎮痛と吸入麻酔薬の節約に使うという方法は興味深いものでした。
ただし、徐脈、血管収縮、心拍出量低下などには注意が必要です。
リドカインを静脈から持続投与する
さらに驚いたのが、リドカインの静脈内投与(CRI)です。
犬では鎮痛補助として使われ、吸入麻酔薬の必要量を減らす効果も期待できます。局所麻酔薬を静脈から入れる、という発想はこれまであまり馴染みがありませんでした。
ただし、猫では血行動態への影響があるため慎重に使う必要があります。
術後は術野を冷やす
薬だけでなく、術後の術野を冷却することも繰り返し推奨されています。
特に整形外科手術などでは、最初の数日間の冷却が疼痛管理の一部として扱われています。こうした簡単な方法も、マルチモーダル鎮痛の一つなのですね。
抗NGF抗体は有力、グルコサミンは補助的
慢性の関節痛では、抗NGFモノクローナル抗体はエビデンスが比較的強く、有効な治療法として位置づけられています。
一方、グルコサミン/コンドロイチンなどのサプリメントは、単独での効果を強く支持する根拠は乏しく、位置づけとしては補助的です。
痛みが出る前から複数の方法で抑える
全体を通して感じたのは、「痛みが出たら薬を使う」のではなく、痛みを予測し、あらかじめ複数の方法を組み合わせて抑えるという考え方です。
鎮痛薬、局所麻酔、CRI、冷却、環境調整、リハビリまで含めて、すべてが疼痛管理なのだと改めて感じました。
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