猫にリンパ腫の疑いがあると、「病理検査で確定してから治療を始めるべきではないのか」と疑問に思われることがあります。
実際には、細胞診の結果と症状、画像検査の所見を合わせて、病理検査を行わず治療を開始することもあります。
重要なのは、「病理検査をするかどうか」ではなく、病理検査の結果によって治療方針が変わる可能性があるかという点です。
執筆:圓尾 拓也(腫瘍科認定医・獣医学博士)
病理検査を待たずに治療を始めることがある理由
リンパ節や胸水、腹水、腫瘤などから採取した細胞診で、典型的なリンパ腫細胞が確認され、画像検査や臨床経過とも矛盾しない場合には、リンパ腫として治療を開始することがあります。
特に大細胞性リンパ腫では、細胞診だけでも診断の可能性が高いことが少なくありません。また、呼吸困難や著しい食欲低下など、全身状態が悪く、一日でも早く治療を始めたい状況では、追加検査より治療を優先することがあります。
病理検査が治療方針を左右する場合もある
一方で、消化管リンパ腫、特に小細胞性リンパ腫では事情が異なります。
小細胞性リンパ腫は慢性腸症などの炎症性疾患と区別が難しく、細胞診だけでは診断が確定しないことがあります。このような場合は、内視鏡や外科手術で組織を採取し、病理検査を行うことで診断精度が高まります。必要に応じて免疫染色やクローナリティ検査を追加することもありますが、複数の検査結果を総合して判断します。
つまり、病理検査は「必ず必要な検査」ではなく、治療法を選ぶために必要な症例で行う検査と考えるのが適切です。
ステロイドは検体採取後が原則
リンパ腫では、ステロイドを先に投与するとリンパ腫細胞が減少し、その後の細胞診や病理検査で診断が難しくなることがあります。
そのため、抗がん剤治療や追加検査を予定している場合は、できるだけ検体を採取してからステロイドを開始します。ただし、重度の呼吸困難や全身状態の悪化など、治療を急ぐ必要がある場合には、診断への影響を理解したうえで治療を優先することもあります。
まとめ
猫のリンパ腫では、病理検査を行わないことが目的ではなく、病理検査が治療方針を変えるかどうかを考えることが大切です。
細胞診だけで十分な情報が得られ、治療方針が変わらない場合には、そのまま治療を開始することがあります。一方で、小細胞性消化管リンパ腫のように炎症性疾患との鑑別が重要な場合には、病理検査が診断と治療方針の決定に大きく役立ちます。
「診断をどこまで確定するか」ではなく、「その子に最も適した治療を選ぶために、どこまで検査が必要か」を考えることが、猫のリンパ腫診療では重要です。
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