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執筆:圓尾 拓也(腫瘍科認定医・獣医学博士)
犬や猫のがんが見つかったとき、多くの方が悩むのが抗がん剤治療です。「副作用で苦しませたくない」「治療しなかったら後悔するかもしれない」「お金の問題もある」。どれも自然な気持ちだと思います。
実際に、治療した人も、治療しなかった人も、後悔を口にすることがあります。ただし、その後悔の多くは、治療の結果そのものではなく、治療を始める前に何を大切にするかが整理できていなかったことから生まれます。
抗がん剤は「治すため」を目指した治療?
抗がん剤というと、「がんをなくす治療」というイメージがあるかもしれません。しかし犬や猫では、必ずしも完治を目指して使うわけではありません。腫瘍を小さくして苦痛を減らす、食欲や元気を取り戻す、家で過ごせる時間を増やす。このように生活の質を保ちながら時間を作るために使います。
例えばリンパ腫では、治療によって再び食べられるようになったり、散歩に行けるようになったりすることがあります。
副作用はあるけれど、人の抗がん剤とは考え方が違います
抗がん剤には副作用があります。食欲低下、嘔吐、下痢、元気消失などが代表的です。
ただし、獣医療では「副作用で苦しませてまで治療する」という考え方は一般的ではありません。生活の質が大きく下がる場合には、減量したり、休薬したり、治療を中止したりします。副作用が出る可能性はありますが、治療の目的はあくまで犬や猫が普段の生活を続けられるようにすることです。
治療しなかった後悔
後悔としてよく聞くのは、「もう少し頑張って治療すればよかった」「一度くらい試してみればよかった」という気持ちです。特にリンパ腫のように抗がん剤への反応が期待できる腫瘍では、この後悔が残ることがあります。
もちろん、年齢や持病、通院の負担、費用などを考えての決定ですから後悔しないでください。
治療した後悔
一方で、「病院ばかりで疲れさせてしまった」「副作用がつらそうだった」「もっと穏やかに過ごさせてあげればよかった」と感じる方もいます。
治療が成功するかどうかは始める前には分かりません。そのため、治療を選んだ人にも悩みや迷いは残ります。
お金の問題も治療方針の一部です
犬や猫の抗がん剤治療は、数万円で終わることもあれば、数十万円以上かかることもあります。費用の話を切り出せない方もおられますが、お金の問題は治療方針を決める大切な要素です。
無理な計画で治療を始めて途中で続けられなくなるより、最初から現実的な範囲でできることを考えた方がお互いに不完全燃焼感がなくなります。
やめどきを決めておく
後悔を減らすために大切なのは、始める前に「どこまで頑張るか」を考えておくことです。例えば、副作用が強ければ中止する、食べられなくなったら緩和ケアへ切り替える、通院が大きな負担になったら見直す、といった基準です。
こうした考え方を共有しておくと、終末期の判断がしやすくなります。
後悔を減らすために
抗がん剤治療で、延命を重視する方もいますし、生活の質を重視する方もいます。
後悔の少ないご家族に共通しているのは、「治療したか、しなかったか」ではありません。治療を始める前に、何を優先するのかを話し合い、納得して決めていたことです。
結果は誰にも予測できません。それでも、「あの時の自分たちなりに最善を考えた」と思っていただけると幸いです。
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