執筆:圓尾 拓也(腫瘍科認定医・獣医学博士)
気温が20℃でも、直射日光を浴びた犬は熱を受け取ります。その熱を、対流や赤外線放射によって十分に逃がせるのでしょうか。
10kgの犬、体温38℃、体表面積0.5m²、外気温20℃として考えます。
直射日光から受け取る熱
日差しを1,000W/m²、犬が太陽に向ける面積を0.15m²とすると、犬に当たる日差しは、
1,000 × 0.15
=150W
です。
1Wは1時間で約0.86kcalなので、
150 × 0.86
=約129kcal/時
となります。
このうち50~90%を吸収すると、日差しによる吸熱は約65~116kcal/時です。
さらに、安静時の代謝熱を約15~20kcal/時とすると、犬に入る熱の合計は、
約80~136kcal/時
となります。
真夏の直射日光を10分間浴びた場合に、10kgの犬へどれくらいの熱量が加わるかは、次の記事で計算しています。
→ 10kgの犬が直射日光を10分浴びると、体温を何℃上げる熱量になる?
体から逃げる熱
対流による放熱は、次の式で概算できます。
熱伝達率 × 体表面積 × 温度差
無風に近い場合は、
5 × 0.5 ×(38-20)× 0.86
=約39kcal/時
少し風がある場合は、
10 × 0.5 × 18 × 0.86
=約77kcal/時
です。
また、犬の体表面温度を38℃、周囲を20℃とすると、赤外線放射による放熱は約45kcal/時と見積もられます。
対流と放射を合わせると、
* 無風:約85kcal/時
* 微風:約120kcal/時
となります。
ただし、これは体表面全体が38℃で、被毛による断熱がないと仮定した理論値です。実際の放熱量は、これより少なくなる可能性があります。
この計算には、パンティングによる蒸発放熱を含めていません。犬は呼吸数を増やし、舌や気道から水分を蒸発させることで熱を逃がします。ただし、湿度が高いと蒸発しにくくなり、パンティングによる放熱効率も低下します。
→ 犬は1回の呼吸で、何カロリー逃す?
気温20℃でも、直射日光なら安全とは限らない
今回の計算では、犬に入る熱は約80~136kcal/時、体から逃げる熱は約85~120kcal/時でした。
日差しの吸収が少なく、風があれば、熱の出入りはほぼ均衡します。
一方、黒い被毛、無風、強い日差しなどの条件では、受け取る熱が放熱量を上回り熱中症になる可能性があります。
さらに、地面や壁が日光で温まると赤外線放射による放熱が減り、アスファルトからの照り返しによる受熱も増えます。
気温20℃は比較的放熱しやすい環境ですが、直射日光の下に長時間いれば、体に熱が蓄積する可能性があります。
→ 犬は何度から熱中症になる?散歩をやめる気温の目安
気温だけで安全と判断せず、日陰を選び、呼吸状態を確認することが大切です。
→ 犬や猫の熱中症
▼ まるおどクイズ に戻る