猫の診察では、恐怖や痛みを減らしながら、必要な診療を成立させることが大切です。今回のガイドラインを読んで、これまでの診療方法を見直す必要があると感じました。
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執筆:圓尾 拓也(腫瘍科認定医・獣医学博士)
防御的な猫には、無理な保定より薬を使う
威嚇や噛みつきなどの防御的な反応が強い猫では、無理に押さえつけるのではなく、抗不安薬や鎮静薬を積極的に検討します。緊急性がなければ、診察を延期して来院前から準備し直すことも選択肢です。
来院前の抗不安薬としては、ガバペンチンなどを検討することがあります。
薬を使うことは、単に猫を扱いやすくするためではなく、恐怖や痛みを減らし、安全に診療を行うための方法なのだと理解しました。
来院前から不安を減らす方法については、犬や猫が動物病院を嫌がるときの対策でも説明しています。
タオルは「押さえる道具」から「安心する道具」へ
30年ほど前、猫の首の後ろを洗濯バサミで挟むと、母猫にくわえられたような状態になり、落ち着くと言われていました。しかし、今回のガイドラインでは、そのようなクリップを使った保定は推奨されていません。首根っこをつかむ保定や、エリザベスカラーを診察時の保定器具として使用することも推奨されていません。
猫の診察には、タオルを常備することが重要だと感じました。これまでは「押さえるときに使うタオル」でしたが、今は「猫が隠れたり、安心したりするためのタオル」へと意味合いが変わりました。必要に応じて緩く包み、猫とスタッフ双方の安全を守るためにも使用します。
採血の局所麻酔は意外な発見
採血前に外用局所麻酔薬を使用するという記載には驚きました。以前、自分でも研究しようと考えたことがありましたが、あまり意味がないのではないかと考えて除外していました。むしろ冷却の方がよいのではないかと思っていたのです。
しかし、猫でもエムラクリームを使用した研究があり、採血時の反応を減らす効果が報告されています。十分な作用時間を確保することで、痛みを減らせる可能性があることを知りました。
採血針についても、25Gの翼状針や、子猫・少量採血ではさらに細い針が選択肢になるという点が印象的でした。もちろん、細ければよいというわけではなく、採血量や血管の状態に合わせて選ぶ必要があります。
グルーミングも鎮静を検討する
毛玉の除去や広範囲のグルーミングも、無理に押さえて行うのではなく、必要に応じて鎮静や麻酔を使用します。防御的な猫の診察も同様です。
これまで「猫は押さえれば処置できる」と考えていた部分があったのかもしれません。しかし、強引に保定することが、次回以降の診察をさらに難しくしてしまう可能性があります。
猫に合わせて診療を組み立てる
ウマやトラ、ゾウなどの大型動物や野生動物は、力で強引に保定することを前提にはできません。環境やトレーニング、鎮静、麻酔などを組み合わせて、安全に処置できる方法を考えます。
猫も体が小さいからといって、押さえつけてよいわけではありません。猫の感情や反応を読み取り、無理のない姿勢や方法を選び、必要であれば薬を使う。つまり、これまでの獣医学的な常識を猫にそのまま当てはめるのではなく、猫に合わせて診療側が努力するべきなのだと思います。
今回のガイドラインをもとに、すでに公開しているキャリートレーニングの記事も修正しました。
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