ホーム > 腫瘍まとめ > 種類 > リンパ腫 > 【鼻腔内型】鼻血やくしゃみがサイン:放射線治療が「第一選択」になる理由
執筆:圓尾 拓也(腫瘍科認定医・獣医学博士)
「最近、鼻血が出るようになった」「くしゃみが止まらず、心なしか顔の形が変わってきた気がする」
鼻の中にできるリンパ腫(鼻腔内リンパ腫)は、こうした症状から見つかります。猫では人や犬の8~10倍、リンパ腫にかかりやすいと言われています。鼻の中は非常に複雑な構造をしており、外からは見えません。そのため、見つかった時にはすでに腫瘍が大きくなっていることも多いのですが、決して諦める必要はありません。なぜなら、鼻腔内リンパ腫は「放射線治療が劇的に効く」腫瘍だからです。
1. なぜ「薬(抗がん剤)」だけでは不十分なのか
前回、リンパ腫は全身のガンなので「抗がん剤(雨)」が必要だと言いました。しかし、鼻の中に関しては少し事情が異なります。通常のリンパ腫は全身疾患とみなされますが、鼻のリンパ腫は鼻だけにとどまることが多いので、局所療法を行うことが可能なのです。また、腫瘍が鼻の通り道を塞いでいる場合、呼吸の苦しさや痛みといった「目の前の苦痛」を一刻も早く取り除かなければなりません。
2. 放射線治療は「ピンポイントの狙撃」
ここで登場するのが、放射線治療です。放射線治療を「山火事(リンパ腫)」の例えで言うなら、「激しく燃え盛る火元(鼻の中)へのピンポイント放水」です。
• 圧倒的な局所制御: 鼻の中のガン細胞を、文字通りその場で死滅させます。
• 即効性: 照射を始めると、数日で鼻血が止まり、顔の腫れが引いていくことも珍しくありません。
• 呼吸の確保: 腫瘍を小さくすることで、再び「自分の鼻で楽に呼吸ができる」ようになります。
3. 「攻めの治療」
「放射線って、副作用が怖いのでは?」そう心配される方も多いですが、今の放射線治療は「腫瘍には最大級のダメージを、周囲の正常な組織(目や脳)には最小限の影響を」という緻密な計算に基づいた照射を行うことができます。ただ当てるだけではなく、副作用をコントロールしながら、最大の効果を引き出すことができます。
4. 「抗がん剤× 放射線」のハイブリッド戦略
鼻腔内リンパ腫は、鼻の中だけを治せばいいわけではありません。やはり「全身のガン」としての側面も持っています。そこで、「放射線で鼻の中をきれいにし、抗がん剤で全身の飛び火を防ぐ」というハイブリッドな治療を行います。この組み合わせによって、単独の治療では到達できなかった「長い元気な時間」を目指すことが可能になります。
最後に:「呼吸」を取り戻すために
鼻腔内リンパ腫の治療のゴールは、単に腫瘍を小さくすることではありません。「再びスースーと寝息を立てて眠り、大好きな家族の匂いを嗅げるようになること」です。鼻血や顔の変形を見て「もう手遅れだ」と決めつけないでください。放射線という強力な武器を使えば、日常を取り戻せる可能性は十分にあります。
リンパ腫:総論
化学療法:リンパ腫治療の大黒柱
多中心タイプ:あちこちのリンパ節腫大
前縦隔タイプ:胸の中にできます
鼻腔タイプ:猫です
化学療法の副作用:知れば怖くないです
レスキュー:再燃したらこうします
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獣医師 圓尾真理
獣医師 圓尾拓也
日本獣医がん学会 腫瘍科認定医1種(I種)
放射線取扱主任者1種
博士(獣医学)
エビデンスにもとづいた情報発信に努めます。
