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執筆:圓尾 拓也(腫瘍科認定医・獣医学博士)
細胞診 FNA とは、細い針でしこりから細胞を取り、判断すること。料理で言う味見です。
なぜ細胞診が必要なのか
診察では、まず経過を伺い、身体検査を行います。しかし、見た目や触診だけでは良性か悪性かを見分けることはできません。炎症や良性腫瘍が疑われる場合でも、悪性腫瘍の可能性を完全に否定することはできないため、細胞診を行います。細胞診は、腫瘍診療の入口となる最も基本的な検査です。
細胞診で分かること
・炎症
・良性腫瘍
・悪性腫瘍
・診断がつきやすい腫瘍(リンパ腫、肥満細胞腫など)
炎症、良性、悪性の見分け方
細胞診では、注射に使用する細い針をしこりに刺します。針の中に腫瘍細胞が入り、その細胞を顕微鏡で調べます。腫瘍を「ブドウの房や枝」とすると、その中の数粒を取り出し、ブドウの実を確認する検査。眺めただけではわからない中身の情報が得られます。
細胞診は、しこりに細い針を刺して細胞を採取します。その細胞をスライドガラスに薄く貼り付け、染色し、顕微鏡で観察します。それにより、細胞の形や特徴から判断するわけです。
顕微鏡で、炎症細胞だけなのか、それ以外の細胞が含まれているか確認します。細胞は正常か異常(悪性)か判断します。異常な細胞としては、そこにあるはずのない細胞があること、細胞の核の異常があることに分けられます。リンパ節なのに、リンパ節にない細胞があればそれだけで異常といえます。また、核の異常が著しいと細胞の分裂が活発であることが示唆されます。さらに、特徴的な細胞がないかも確認します。これらの結果から、炎症、良性腫瘍、悪性腫瘍、診断がつきやすい腫瘍(リンパ腫、肥満細胞腫など)と分類します。
どんなときにする?
しこりのことが多いですが、赤くただれているときもすることがあります。しこりは、触れるものはなんでも。皮膚の膨れ、腕や爪の付け根のしこり、しっぽのしこりなどがその例です。ただれている場合には、表面を削ってその下の新鮮創の細胞をみることがあります。
痛みはある?
細胞診で使用する針は、ワクチンや採血と同じ細い針です。そのため痛みは採血やワクチンと同程度で、特別に強い痛みが出る検査ではありません。多くの犬や猫は、無麻酔で短時間で検査が可能です。
細胞診の限界
細胞診は非常に有用な検査ですが、100%の確定診断ができるわけではありません。しかし
・炎症
・良性腫瘍
と判断できた場合には、それ以上の検査が不要になることも多くあります。診断がつかないときは日をおいて料理の味見と同じように何度か行うことがあります。それくらいカジュアルな検査としての位置付けです。「細胞診」と堅苦しい名前ですが肩肘張ったものではありません。良性と考えられる場合は、定期的な経過観察を行います。
その場で判断できるのはここまでです。細胞診で腫瘍の種類を確定するには専門家の判断を仰ぐのが賢明です。それ以上の検査としては病理検査があり、病理検査の専門家に依頼します。つまり、細胞診のスライド、もしくは、新たに組織生検を行い病理検査センターに郵送することになります。
細胞診はあくまでも数個のブドウの実の検査。病理検査は、ブドウの房やブドウの枝まで検査するというものです。病理検査の方がたくさんの情報を得ることができそうですよね。
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