愛犬・愛猫のがん治療、放射線治療と緩和ケアどちらを選ぶ?

▼ 現在地:ケア > 本記事
▼ カテゴリー
症状検査腫瘍治療ケアその他

執筆:圓尾 拓也(腫瘍科認定医・獣医学博士)

「がんと診断され、放射線治療を勧められました。体に負担はないのでしょうか?それとも、このまま緩和ケアで穏やかに過ごさせた方がいいのでしょうか?」このようなご相談は、日々の診察で非常によくいただきました。20年以上、放射線治療と腫瘍診療に携わってきた経験から、この選択に「唯一の正解」はありません。

1. 放射線治療:がんを「抑える・小さくする」ための治療

放射線治療は、目に見えないエネルギーを使って、がん細胞の増殖を抑えたり、死滅させたりする治療です。

メリット
・手術が難しい部位(鼻腔内・脳・口腔内など)にも対応できる
・「完治を目指す治療(根治照射)」と「症状を和らげる治療(緩和照射)」の両方に使える
・痛みや出血などの症状改善が期待できる

デメリット
全身麻酔が必要
数週間にわたる通院が必要
・費用が高額になることが多い
皮膚炎などの副作用が起こる可能性がある

放射線治療は非常に有効な治療ですが、体力や生活環境を含めた総合的な判断が必要な治療でもあります。

2. 緩和ケア:「苦しみ」を取り除くための治療

緩和ケアは「治療を諦めること」ではありません。痛みや呼吸の苦しさ、不快感を積極的に取り除き、「生活を最後まで守ること」を目的とした医療です。

メリット
・麻酔のリスクがない
・自宅で家族と過ごす時間を優先できる
・体への負担が少ない

デメリット
・腫瘍そのものを小さくすることは難しい
・病気の進行自体を止めることはできない

治療ではなく「生活」を支える選択ですが、結果的に最も満足度の高い選択になるケースも少なくありません。

3. どちらを選ぶべきか?3つの判断基準

迷われたときは、以下の3つの視点で考えてみてください。

今のQOL(生活の質)はどうか?

食欲があり、歩けている、普段通り過ごせている。
放射線治療で「より良い状態を長く維持する」選択が現実的

すでに食欲低下・衰弱がある。
→ 通院や麻酔が負担になりやすく、緩和ケアの方が合う場合もある

治療のゴールはどこか?

・少しでも長く一緒にいたい(延命・治療志向)
・苦しまず穏やかに過ごしてほしい(緩和志向)

この違いは非常に重要です。治療の選択は「正しさ」ではなく、ご家族の価値観によって変わるものです。

通院・費用の現実的な条件

放射線治療は、大学病院などの二次診療施設への通院が必要です。
・通院距離
・時間的な負担
・費用

これらを無理に乗り越えようとすると、結果的にご家族も動物も疲弊してしまうことがあります。

獣医師からのメッセージ

動物病院で放射線治療を提案されるケースは限られています。
・費用が高額であること

その背景には、
・効果に個体差があること
・緩和期間が限られる場合もあること

といった現実があります。私自身、放射線治療で大きく改善した子も、緩和ケアで穏やかに過ごした子も、どちらも数多く診てきました。大切なのは、「どちらが正しいか」ではなく、「どちらが後悔の少ない選択か」です。

もし判断に悩まれている場合は、セカンドオピニオンも含めてご相談ください。ご家族にとって最も納得できる選択を、一緒に考えていきましょう。

▼ 関連記事
犬の腫瘍は手術しないとどうなる?
「自宅での看取り」の準備と心構え
がん末期に使うステロイド。元気?
▼ 腫瘍の記事をカテゴリーから探す
症状検査腫瘍治療ケアその他

友だち追加 友だち追加 Instagram Instagram はじめての方へ はじめての方へ
上部へスクロール