犬の腫瘍に対する飲み薬「TS-1」とは?効果・副作用・使い方を解説

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執筆:圓尾 拓也(腫瘍科認定医・獣医学博士)

手術放射線治療以外に、もっと負担の少ない治療はないですか?」

犬のがん治療では、こうしたご相談をいただくことが少なくありません。そこで注目しているのが、飲み薬タイプの抗がん剤「TS-1」です。

この記事では、実際に学術論文として報告した研究内容をもとに、TS-1が犬の腫瘍治療にどのように使えるのかを、分かりやすく解説します。

しこりについて全体像を知りたい方は【腫瘍トップ】をご覧ください。

TS-1とは?犬に使われることがある抗がん剤

「TS-1」は、人の医療では胃がんや肺がんなどに広く使われている経口抗がん剤(飲み薬)です。特徴は、3つの成分を組み合わせることで、
・抗腫瘍効果を高める
・消化器の副作用を抑える

という設計になっている点です。ただし、犬ではそのまま人と同じ使い方をすると、副作用が強く出る可能性があり、これまで安全な投与方法は十分に分かっていませんでした。

治療とともに「どう過ごすか」もとても大切です。
→【痛みや生活の質を考えたケアについて】まとめています。

研究の目的:負担の少ない投与方法を探る

今回の研究では、犬に対してTS-1を安全に使う方法として、「隔日投与(1日おき)」というスケジュールを検討しました。

対象:さまざまな悪性腫瘍を持つ犬(11頭)
・鼻腔内腫瘍
・肛門嚢腺癌
・乳腺腫瘍 など

投与方法
・月・水・金に投与(週3回)
・1日2回内服(2.2mg/kgを分割)

目的
・副作用を抑えられるか
・通院で継続できるか
・生活の質(QOL)を保てるか

「毎日飲ませる」のではなく、あえて休薬日を作ることで、体への負担を軽減することが狙いです。

研究で分かった3つのポイント

① 重い副作用は見られなかった

多くの症例で、副作用は許容範囲内にとどまりました。
・入院が必要なレベルの副作用(グレード3以上)はなし
・外来通院で治療継続が可能

比較的安全に使える可能性が示されました。

② 一部で腫瘍のコントロール効果

11頭中、
・腫瘍が小さくなった(部分奏効)
・進行が止まった(安定)

といった反応が見られました。特に、
・手術後の再発
・放射線治療後の再燃

といったケースでも、数ヶ月単位で症状をコントロールできた例があります。

③ 注意すべき副作用は「目」と「皮膚」

特徴的だった副作用は以下です。
・目:結膜炎・角膜炎
・皮膚:色素沈着(黒ずみ)
・消化器:食欲低下など

多くは、
・点眼治療
・一時的な休薬

で対応可能でしたが、長期使用では定期的なチェックが重要です。

この研究が示す意味

この結果から、TS-1の隔日投与は、犬の腫瘍に対する新しい選択肢になり得ると考えられます。従来のように、
・強い抗がん剤で副作用を我慢する治療

だけでなく、
・飲み薬で負担を抑えながら
・腫瘍と付き合っていく治療

という方向性が現実的になってきています。

当院の考え方(重要)

「もう治療法がないと言われた」
「副作用が怖くて迷っている」
そうした状況でも、選択肢は一つではありません。

・科学的根拠(エビデンス)に基づく治療
・生活の質(QOL)を重視した方針
・ご家族の希望に合わせた治療設計

を大切にしています。TS-1のような治療についても、
・メリット
・デメリット
・向いているケース・向かないケース

を丁寧にご説明した上で、納得できる治療を一緒に考えていきます。

抗がん剤についてさらに理解を深めたい方は
→【抗がん剤の副作用は?
→【抗がん剤はボクシングかダンスか?
→【TS-1という薬はどう使う?

まとめ

・TS-1は飲み薬タイプの抗がん剤
・犬では「隔日投与」で安全性が示唆された
・一部で腫瘍のコントロール効果あり
・目や皮膚の副作用に注意が必要

→ 負担を抑えながら続けられる治療の一つ

参考文献
Nishiyama Y, Fukuyama Y, Maruo T*, Yoda S, Iwano M, Kawarai S, Kayanuma H, and Orito K. (2021): Safety of alternate-day treatment with TS-1 (tegafur/gimeracil/oteracil) in tumor-bearing dogs: A pilot study. J Vet Med Sci 83: 1206-1211.

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→【はじめての方へ(診療の流れとご案内)】をご覧ください

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