たとえば避妊手術のような一般的な処置でも、重い心臓病や腎臓病があれば麻酔リスクは高くなります。反対に、高齢であっても全身状態が安定していれば、状態に合わせた麻酔計画を立てられることがあります。
ただし、実際のリスクはASA-PSだけではなく、手術の内容や緊急性、麻酔時間、モニタリング体制などにも左右されます。
クラス1〜5の詳しい意味は「犬猫のASA-PS分類とは?」で解説しています。
→ 麻酔・手術について
→ 15歳の犬で手術?麻酔リスクと判断基準
健康な犬や猫の麻酔リスク
麻酔リスクはゼロではありません。しかし健康な犬や猫の麻酔関連死亡率は低く、大規模調査では約0.05~0.1%と報告されています。1,000頭から2,000頭に1頭程度です。ただし、これは特定の地域・時期・条件で得られた集団データです。個々の犬や猫のリスクを、そのまま示す数字ではありません。
事前検査ですべての問題を予測できるわけではありませんが、多くの健康な犬や猫は大きな問題なく麻酔を終えています。
ASA-PSクラスが上がるとリスクも上がる
ASA-PSクラスが上がるということは、より重い全身性疾患がある状態を示します。
ASA-PSのクラスが高いほど、麻酔・処置に関連するリスクも高くなる傾向があります。前述の大規模調査では、健康ではない犬猫の死亡率は、健康な犬猫より明らかに高い結果でした。
ただし、ASA-PSは死亡率を直接計算するものではありません。同じクラスでも、病気の種類、手術内容、緊急性、医療体制などによって実際のリスクは異なります。
年齢ではなく全身状態
「15歳だから麻酔は危険ですか」と聞かれることがあります。確かに高齢になるほど病気は増えます。しかし、年齢そのものが麻酔事故を起こすわけではありません。
心臓や腎臓が安定している15歳の犬や猫もいます。一方で、重度の貧血や心不全、出血性疾患を抱えた若い犬や猫では、年齢に関係なくリスクが高くなります。
ASA-PSを麻酔計画に生かす
ASA-PSは、「危険だから手術できない」と判断するためだけの数字ではありません。
たとえば、脱水や循環状態を評価して必要な処置を行う、貧血の原因を調べる、呼吸状態を可能な範囲で安定させる、心臓病に応じて麻酔薬や輸液計画を調整する、といった準備を検討します。
ASA-PSによる全身状態の評価は、どのような準備や麻酔管理が必要かを考える材料になります。
麻酔の安全性は、手術当日に突然決まるものではありません。術前検査、適切な麻酔計画、麻酔中のモニタリング、そして麻酔から覚めるまでの管理。その積み重ねによってリスクをできる限り下げていきます。
まとめ
ASA-PSは、麻酔前の犬や猫の全身状態を分類するための指標です。クラスが高いほど周術期のリスクは高くなる傾向がありますが、ASA-PSだけで安全性や手術の可否が決まるわけではありません。
身体検査や術前検査を行い、必要に応じて全身状態を安定させ、個々の状態に合った麻酔計画とモニタリングを行うことが重要です。
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