15歳の犬でも腫瘍の手術すべき?麻酔リスクと判断基準

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執筆:圓尾 拓也(腫瘍科認定医・獣医学博士)

まとめ
15歳でも手術できる犬はいます。ただし「年齢」ではなく「全身状態」で判断します。
・元気で内臓に問題がない → 手術できる可能性あり  
・食欲低下や持病がある → 無理はしない判断も重要  
「15歳だから手術できない」でもなく「15歳でも必ず手術すべき」でもない。

15年という長い月日。平均寿命が伸びた現代でも15歳は寿命が近いと言える年齢です。そんな時、体に腫瘍が見つかったら・・・。「もう高齢だから無理をさせたくない」「でも、まだ一緒にいたい」と悩むのは当然です。

15歳の犬は手術しても大丈夫?判断基準

大学の講義では、腫瘍の治療は種類」「広がり(ステージ)」「全身状態の3つを把握して相談しましょうと教えていました。ここでいう「全身状態」の把握に、年齢的な要因が含まれます。

確かに15歳は、人間なら70~80代に相当します。しかし、医学的な判断は「実年齢」よりも「生物学的な若々しさ」を重視します。

• 体の動きに若々しさがあるか?
• 血液検査で内臓の異常がないか?

これらを加味して、「治療に耐えられる体か」を冷静に判断します。

15歳の麻酔リスクはどれくらい?

麻酔のリスクは年齢そのものよりも、以下のことを判断基準としています。

・心臓や肺の状態
・肝臓・腎臓の機能
・体力(食欲・活動性)

実際の臨床では、「15歳でも問題なく麻酔できる犬」と「10歳でもリスクが高い犬」がいます。

高齢犬で手術をおすすめしないケース

・重度の心臓病や腎不全がある
・食欲が落ちて体力が低下している
・腫瘍の進行が早く、手術しても生活の質が改善しない

このような場合は、無理に手術を行うよりも、残された時間を優先する方が良いこともあります。

治療の「目的」を明確にする

次に考えるのは、治療のゴールです。

1. 根治: 完全に治すことを目指す
2. 緩和: 痛みや苦しみを和らげる
3. QOLの維持: 今の生活の質をできるだけ保つ

たとえ15歳でも、治療によって穏やかな時間が得られるなら、それは価値のある選択です。一方で、治療のリスクがその子の幸せを上回ると判断すれば、無理をしない選択肢も出てきます。

18歳での放射線治療という経験

「高齢だから麻酔は無理」という声をよく耳にしますが、実際にはもっと上の年齢でも治療を成し遂げることもあります。

私はこれまで、18歳の犬や猫にも放射線治療を行ってきました。放射線治療は複数回の全身麻酔が必要ですが、飼い主さんと覚悟を共有し、しっかりした管理下で行いました。17歳で手術をして術後の再発防止として放射線治療を完了できることもあります。

もちろん、すべてがハッピーエンドとは限りません。回復が遅れたり、予期せぬ体調不良が続いたりすることもあります。「治療しなければよかった」と後悔する可能性もゼロではありません。

結論:手術を「しない」という選択肢も正解です

すべての症例に積極的な治療を勧めるわけではありません。

大切なのは、「年齢」を理由にすべての選択肢を捨てないこと。 そして、「何もしないこと」もまた、その子を想う立派な一つの治療方針緩和ケアであると知ることです。

まずは「そのしこりが何か」を知ることが最初の一歩です。体への負担が少ない検査(細胞診)で、多くの情報が得られます。「手術するかどうか」は、その結果を見てからでも遅くありません。

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