秋になると「最近よく食べるようになった」と感じることがあります。夏の暑さで食欲が落ちていた犬では、気温が下がって過ごしやすくなることで、本来の食欲に戻ることがあります。また、寒くなると体温を維持するためのエネルギー消費が増えるため、屋外で長く過ごす犬や寒さの影響を受けやすい犬では必要なカロリーが増えることもあります。
一方、「日照時間が短くなるとセロトニンが減って食欲が増える」「冬に備えて脂肪を蓄えようとする」といった説明もありますが、これらが家庭犬の秋の食欲増加を直接説明するという十分な根拠はありません。メラトニン、レプチン、グレリンなどによる季節性の代謝変化は野生のイヌ科動物などで研究されていますが、室温が管理され、年間を通して十分な食事を得ている家庭犬では、その影響は限定的と考えた方がよいでしょう。
執筆:圓尾 拓也(腫瘍科認定医・獣医学博士)
食欲が増えてもフードをすぐ増やさない
現代の室内犬では、秋になっても消費エネルギーが大きく増えないことがあります。むしろ涼しくなって食欲が戻った一方、散歩時間や運動量は変わらなければ、欲しがるだけ与えることで体重が増えてしまいます。
食事量を決めるときは「欲しがるか」より、体重とボディ・コンディション・スコア(BCS)を見ることが大切です。肋骨が適度に触れ、上から見て腰のくびれがある状態を維持できているかを確認します。おやつも1日の摂取カロリーに含まれるため、食欲が強い犬ではフードを数回に分けたり、知育トイを使ってゆっくり食べさせたりする方法もあります。
「食べるのに痩せる」は病気のサイン
秋だから食欲が増えたと思っていても、病気が隠れていることがあります。特に注意したいのは、よく食べているのに体重が減る場合です。
糖尿病では、多食とともに水をたくさん飲む、尿量が増える、体重が減るといった変化がみられます。副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)では、食欲増加、多飲多尿、お腹が張る、筋肉が落ちる、皮膚や被毛の変化などがみられることがあります。膵外分泌不全では、非常によく食べるにもかかわらず痩せ、大量の軟便などを伴うことがあります。
秋の食欲は体重と一緒に見る
夏に落ちていた食欲が秋に戻り、元気で便も正常、体重も安定しているのであれば、多くの場合は大きな問題ではありません。ただし「食欲がある=健康」とは限りません。急に食欲が強くなった、水を飲む量が増えた、食べているのに痩せる、便の量や状態が変わったといった場合は、一度診察を受けることをおすすめします。
秋は食欲そのものよりも、体重、BCS、飲水量、便の状態、活動量を一緒に考えます。
