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私が獣医師になったのは1994年、約30年前です。当時の犬や猫の平均寿命は10歳くらいでした。11歳で銅賞、13歳で銀賞、15歳で金賞を配っていた時代です。今ほど腫瘍を診ることは多くなく、「こぶを取って、その後は静かに見守る」という考え方が一般的でした。
その後、フィラリア予防の普及によって寿命が延び、動物病院で腫瘍を診察する機会が急激に増えました。
振り返ると、50年前は大きな手術ができず、40年前は抗がん剤もなく、30年前には放射線治療もありませんでした。もし昔の時代に腫瘍になったら、できることはほとんどありませんでした。
こうした歴史を知ったうえで、今一緒に暮らしているウーピー(10歳の犬)にしこりができたらどうするかを考えてみます。
まずは予算を決めます。おそらく10万~50万円くらいなら無条件で出すと思います。それ以上になる場合は、奥さんとも相談します。
病名と腫瘍のステージは知りたいので、ここまでは無条件です。
簡単な手術で治る見込みがあるのであれば、こちらも無条件で受けます。
問題になるのは、抗がん剤や放射線治療です。診断も含めて50万円くらいまでなら変わりませんが、それを超えるような治らない病気であれば悩むと思います。
追加でどこまで行うかを考えると、症状緩和が期待できるのであれば、月10万円くらいまでなら受け入れるかもしれません。
ただ、10歳を超えると、がん以外の病気も出てきます。次に別の病気が見つかったときのことを考えると、予算的には厳しくなります。
この話は「がん」だからまだ考えやすいのです。むしろ大変なのは診断がつきにくい内科疾患かもしれません。セカンドオピニオンを受けながら、診断がつくまでに20万円かかっていたらどうするか、と考えるかもしれません。
もし長引きそうな病気なら、数軒の動物病院を回って、どこで治療するかを決めると思います。
そう考えると、自分なら次のようにする気がします。
- 子供のころから(健康なときから)ペット保険に入る。
- 予算を決めて、治療の目的と合わせて検討する。
- 治りにくそうなら、数軒の動物病院で話を聞いて考える。
もし予算が10万円なら、取れるしこりであれば、診断と治療を兼ねて手術を受けると思います。
30年前は、これが当たり前でした。病理検査もなく、CTもなく、放射線治療もありません。抗がん剤の知識や使い方も、獣医師の間ではまだ一般的ではありませんでした。獣医がん研究会ができたのも1995年です。
最後に少し極端な言い方をすると、ペットを飼う・飼わないもエゴ、治療をする・しないもエゴ。
この世の中に、その子が生きる椅子(スペース)を作り、一緒に暮らし、最後を看取る。それだけで十分なのではないでしょうか。
治療をしてもしなくても、ウーピーは満足してくれると私は信じています。少なくとも今は、ウーピーの椅子を確保し、生活を支え、一緒に時間を過ごしていることに満足しています。
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