犬や猫の下痢は、よくある症状です。食べ物が合わなかっただけのこともありますが、感染症、膵炎、腸の炎症、腫瘍、肝臓や腎臓の病気などが隠れていることもあります。
下痢を止めるとともに、脱水していないか、全身状態が悪くないか、急いで受診すべき下痢ではないかを見分けます。
すぐに受診した方がよい下痢
元気がない、食欲がない、何度も吐く、水も飲めない、血便が多い、黒い便が出る、ぐったりしている。このような場合は、早めの受診をお勧めします。特に子犬、子猫、高齢の犬猫、持病がある犬猫では、半日でも状態が大きく変わることがあります。
下痢と嘔吐が同時にある場合は、脱水が進みやすくなります。小さな犬や猫では、短時間でぐったりしてしまうこともあります。「下痢だけだから大丈夫」とは限りません。
下痢で一番怖いのは脱水です
下痢では、便と一緒に水分や電解質が失われます。軽い下痢でも、回数が多いと脱水が進みます。歯ぐきが乾いている、皮膚をつまんだあと戻りが遅い、目がくぼんでいる、尿が少ない、ぐったりしている。こうした様子があれば脱水の可能性があります。
歯ぐきが白い、体が冷たい、呼吸が荒い、立てない場合は救急の状態です。夜間でも救急病院に相談してください。
小腸の下痢と大腸の下痢
下痢には、小腸に問題がある下痢と、大腸に問題がある下痢があります。小腸性の下痢では、1回の便の量が多くなります。水っぽい便が大量に出ることもあり、嘔吐を伴ったり、長く続くと体重が減ったりします。
大腸性の下痢では、便の回数が増えます。少量ずつ何度も出る、しぶる、粘液がつく、鮮血が混じる。このような便が多くなります。体重減少、嘔吐、元気消失、脱水がある場合は動物病院に早く相談ください。
血便は必ずしも末期ではありません
少量の鮮血は大腸の炎症でも見られます。何度も下痢をして腸の粘膜が荒れると、便の表面に赤い血がつくことがあります。
一方で、黒い便は注意が必要です。胃や小腸など、上の方の消化管から出血している可能性があります。赤い血が少しついたというだけで必ず重病とは限りませんが、元気がない、血の量が多い、黒い便、嘔吐を伴う場合は早めに受診してください。
犬と猫では、家庭での対応が違います
犬では、元気があり、嘔吐がなく、軽い下痢だけであれば、短時間だけ胃腸を休ませることがあります。ただし、水は必要です。下痢のときに長く水を抜くと、脱水が進みます。
猫は自己判断で絶食させない方が安全です。猫は食べない時間が長くなると、肝リピドーシスという重い肝臓の病気につながることがあります。猫の下痢では、食べられるかどうかがとても大切です。食欲が落ちている猫は、早めに相談してください。
下痢の原因
下痢の原因はひとつではありません。食事の変更、食べすぎ、拾い食い、おやつ、脂肪の多い食べ物、ストレスなどで起こることがあります。子犬や子猫では、寄生虫、ジアルジア、コクシジウム、細菌性腸炎、ウイルス感染なども重要です。
慢性的に続く場合は、食物アレルギー、慢性腸症、炎症性腸疾患、膵外分泌不全、膵炎、肝胆道疾患、内分泌疾患、腫瘍なども考えます。「整腸剤で一度よくなるけれど、また繰り返す」ような下痢では、原因を整理していく必要があります。
動物病院で行う検査
まず大切なのは問診です。いつからか、何回出ているか、血や粘液はあるか、吐いているか、食欲はあるか、食事やおやつを変えたか、拾い食いはないか、体重が減っていないか。こうした情報が診断の助けになります。
そのうえで、便検査を行います。寄生虫、原虫、細菌のバランス、未消化物、血液や炎症の有無などを確認します。必要に応じて、血液検査、レントゲン、超音波検査、ウイルス検査、外注の糞便PCR検査などを組み合わせます。慢性的な下痢では、食事療法への反応を見たり、内視鏡検査や病理検査が必要になることもあります。
治療は「止める」だけではありません
下痢の治療は、原因と状態によって変わります。軽い下痢であれば、食事の調整、整腸剤、消化管保護薬などで改善することがあります。脱水がある場合は輸液が必要です。嘔吐がある場合は、吐き気止めを使うこともあります。
寄生虫や原虫がいれば駆虫薬を使います。細菌感染が疑われる場合でも、抗菌薬が必要かどうかは状態を見て判断します。慢性腸症では、療法食が治療の中心になることがあります。低脂肪食、消化器サポート食、加水分解食、新奇タンパク食などを、病状に合わせて選びます。薬だけでなく、食事が治療になることも多いです。
家でできること
下痢をしたときは、便の写真を撮っておくと診察で役立ちます。可能であれば、新しい便を少量持参してください。水は飲めているか、吐いていないか、元気はあるか、食欲はあるか、便の回数は増えていないか。このあたりを見てください。
市販薬や人の下痢止めを自己判断で使うのは避けてください。腸の動きを無理に止めることで、かえって悪化することがあります。
夜間に迷う下痢
夜間でも、ぐったりしている、何度も吐く、水も飲めない、血便が大量に出る、黒い便が出る、お腹が強く痛そう、子犬や子猫、高齢で持病がある、異物を食べた可能性がある。このような場合は救急病院に相談してください。
救急病院を受診するときは、必ず事前に電話してください。便や嘔吐物の写真、飲んでいる薬、最近の検査結果があると診療が進みやすくなります。
まとめ
犬や猫の下痢は、よくある症状です。でも、軽いものから命に関わるものまで幅があります。見るべきポイントは、便の形だけではありません。元気、食欲、嘔吐、脱水、年齢、持病。これらを合わせて考えます。
一度だけの軽い下痢で、元気も食欲もある。そのような場合は、短時間で落ち着くこともあります。一方で、元気がない、吐く、血便が多い、何度も続く、食べない。このような下痢は、早めに受診した方が安全です。
下痢は、体からのサインです。止めるだけでなく、なぜ起きているのかを一緒に整理していきましょう。
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