執筆:圓尾 拓也(腫瘍科認定医・獣医学博士)
ある地方都市の月平均気温からHDU(Heartworm Development Unit:フィラリア発育単位)をもとに、5~10月のフィラリア感染リスクの合計を100としてAIで単純化して計算したところ、各月の相対的な感染リスクは次のようになりました。
・5月:約9%
・6月:約16%
・7月:約24%
・8月:約26%
・9月:約18%
・10月:約6%
合計:約100%
では、7月末・8月末・9月末の3回だけフィラリア予防薬を投与し、7~9月の感染をカバーできたと仮定すると、年間の感染リスクはおよそ何%残るでしょうか?
→ フィラリアの薬を飲み忘れたら?
答え:約32%
7~9月の感染リスクを合計すると、
24%+26%+18%=約68%
したがって、予防できずに残る相対的な感染リスクは、
100%-68%=約32%
となります。
フィラリアの感染リスクは、蚊がいる期間を通して均等ではありません。気温が高い時期ほど蚊の吸血活動が活発になり、蚊の体内でフィラリア幼虫が感染可能な段階まで発育する速度も速くなります。そのため、このモデルでは、7~9月の3か月で年間感染リスクの約7割を占める計算になりました。
もちろん、これは月平均気温とHDUから作った単純なモデルであり、実際の感染確率そのものではありません。蚊の数、感染犬の数、降水量、犬が屋外で過ごす時間などによって、実際のリスクは変わります。
それでも、フィラリアの感染リスクが夏に集中している一方で、夏の3か月だけ予防しても、年間リスクの約3割は残るという結果です。
「真夏だけ飲ませれば十分」と考えると、春から初夏、あるいは秋の感染を取りこぼす可能性があります。フィラリア予防は、リスクの高い夏をしっかり押さえるだけでなく、その前後まで含めて考えることが大切ですね。
