犬や猫の麻酔リスクを考えるとき、「ASA-PS」という指標があります。これは手術の大きさではなく、麻酔前の全身状態を評価するためのものです。
たとえば避妊手術でも、重い心臓病や腎臓病があれば麻酔リスクは高くなります。反対に、大きな手術であっても全身状態が安定していれば、比較的安全に麻酔を行えることがあります。
健康な犬や猫の麻酔リスク
麻酔リスクはゼロではありません。しかし健康な犬や猫の麻酔関連死亡率は低く、大規模調査では約0.05~0.1%と報告されています。1,000頭から2,000頭に1頭程度です。
もちろん、予測できない体質やアレルギー反応が起こる可能性はあります。それでも、多くの健康な犬や猫は問題なく麻酔を終えています。
ASA-PSクラスが上がるとリスクも上がる
ASA-PSクラスが上がるということは、体の余力が少なくなっているということです。
心臓病、腎臓病、重度の貧血、呼吸器疾患、脱水などがあると、麻酔薬による血圧低下や呼吸抑制の影響を受けやすくなります。
報告によって差はありますが、ASA IIIでは約1~3%、ASA IVでは約3~8%、ASA Vでは10%を超えることもあります。健康な犬や猫と比べると、何十倍もの差になることがあります。
年齢ではなく全身状態
「15歳だから麻酔は危険ですか」と聞かれることがあります。
確かに高齢になるほど病気は増えます。しかし、年齢そのものが麻酔事故を起こすわけではありません。
心臓や腎臓が安定している15歳の犬や猫もいます。一方で、重度の貧血や心不全、出血性疾患を抱えた若い犬や猫では、年齢に関係なくリスクが高くなります。
ASA-PSは安全な麻酔のための指標
ASA-PSは、「危険だから手術できない」と判断するためだけの数字ではありません。
脱水があれば点滴を行う。貧血があれば原因を調べる。呼吸状態が悪ければ先に安定させる。心臓病があれば麻酔薬や輸液量を調整する。
ASA-PSは、どこに問題があり、何を準備すれば安全性を高められるかを考えるための指標です。
麻酔の安全性は、手術当日に突然決まるものではありません。術前検査、適切な麻酔計画、麻酔中のモニタリング、そして麻酔から覚めるまでの管理。その積み重ねによってリスクをできる限り下げていきます。
まとめ
ASA-PSは犬や猫の全身状態を評価するための指標です。健康な犬や猫の麻酔リスクは低い一方で、ASA-PSクラスが上がるにつれてリスクも高くなります。
ASA-PSに応じて、安全な麻酔のために何を準備すべきかを考えます。
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