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執筆:圓尾 拓也(腫瘍科認定医・獣医学博士)
メトロノミック療法とは、少ない量の抗がん剤を、毎日または数日に1回、継続して飲ませる治療です。メトロノームのように頻繁に飲ませるというイメージです。通常の抗がん剤治療のように、強い量で腫瘍を一気に叩くという考え方とは異なります。
目的は、腫瘍を完全になくすことではなく、腫瘍の進行をゆっくりにすることです。腫瘍に栄養を送る血管の働きを抑えたり、腫瘍のまわりの環境を変えたりすることで、がんを急に大きくさせないように管理します。
どんなときに選ばれるのか
メトロノミック療法は、手術後に再発や転移をできるだけ遅らせたいとき、通常の抗がん剤治療が難しいとき、高齢や持病のため強い治療を避けたいときに検討されます。
また、腫瘍を小さくすることよりも、食欲や元気を保ちながら、できるだけ穏やかに過ごすことを優先したい場合にも選択肢になります。
期待できること
この治療で期待するのは、腫瘍が急に大きくならないこと、再発や転移までの時間を延ばすこと、生活の質を保つことです。腫瘍が小さくならなくても、大きくならずに安定しているなら、治療の意味があると考えます。
そのため、効果の判断は「小さくなったか」だけではありません。食欲があるか、元気に過ごせているか、痛みや出血が増えていないか、画像検査で進行が止まっているかを合わせて見ていきます。
副作用は少ないが、ゼロではない
メトロノミック療法は、通常の抗がん剤治療に比べると副作用は軽いことが多く、自宅で内服できるため、通院の負担も少なくなります。
ただし、副作用がない治療ではありません。食欲低下、嘔吐、下痢、元気の低下、白血球や血小板の減少、肝臓や腎臓の数値の変化が出ることがあります。シクロホスファミドを使う場合には、血尿や頻尿などの膀胱炎にも注意します。
自宅で抗がん剤を扱う注意
メトロノミック療法では、飼い主さんが自宅で抗がん剤を飲ませることがあります。そのため、薬の扱いには注意が必要です。
薬を割ったり、つぶしたり、カプセルを開けたりしないようにします。投薬時は手袋を使い、投薬後の尿、便、嘔吐物を片付けるときも直接触れないようにします。妊娠中の方、小さな子ども、免疫が落ちている方は、薬や排泄物の処理を避けた方が安全です。
続けるか、やめるかの判断
メトロノミック療法は、何回飲んだら終わりという治療ではありません。腫瘍が安定していて、副作用も許容できるなら続けます。
反対に、腫瘍が大きくなる、転移が進む、食欲や元気が落ちる、副作用で生活の質が下がる場合には、休薬、減量、中止を考えます。大切なのは、薬を続けることそのものではなく、犬や猫が楽に過ごせているかどうかです。
まとめ
メトロノミック療法は、少ない量の抗がん剤を続けることで、がんの進行をゆっくりにする治療です。強く攻める治療ではなく、穏やかに抑える治療と考えると分かりやすいと思います。
標準的な抗がん剤治療の代わりになる場合もあれば、手術や放射線治療のあとに組み合わせる場合もあります。副作用は比較的少ないことが多いですが、自宅で抗がん剤を扱う治療である以上、安全管理と定期的な検査は必要です。
その犬や猫にとって、治療を続けることで生活の質が保てているか。そこを確認しながら、無理のない形で続ける治療です。
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