・キャリーは普段から部屋に出しておき、安心できる場所にする
・移動中はタオルをかけて視界を減らす
・診察がない日に、おやつだけもらって帰る練習をする
・無理に押さえつけず、その子のペースを大切にする
・犬と猫の距離を取り、待合室での刺激を減らす
・必要に応じて、来院前に不安を和らげる薬を使う
犬や猫が動物病院を嫌がるのは、知らないにおい、音、診察台、過去の注射や採血の記憶などから、自分の身を守ろうとする自然な反応です。
一度強い恐怖を経験すると、その記憶が残り、次回以降の通院がさらに難しくなることがあります。
病院嫌いは、性格の問題ではありません。相談してください。
怖い経験は、次の通院に残ります
犬や猫は、嫌だった経験をよく覚えています。
一度でも強く押さえられた。痛いことをされた。家族と離れて入院した。そうした経験があると、「病院=怖い場所」と学習してしまうことがあります。
次に病院へ行くとき、まだ何もされていなくても、キャリー、車、待合室、診察台、白衣、消毒薬のにおいだけで不安が強くなります。
この状態を、恐怖・不安・ストレス、まとめてFASと呼ぶことがあります。
FASが強いと、心拍数や血圧が上がったり、呼吸が荒くなったりします。猫ではストレスだけで血糖値が上がることもあります。つまり、怖がっていることは、気持ちの問題だけではなく、検査結果にも影響します。
無理に押さえると、もっと病院が苦手になります
診察や処置をするために、どうしても保定が必要なことはあります。毎回強く押さえつけて何とか終わらせる方法は、長い目で見ると逆効果になることがあります。
その日は採血できても、次回はもっと怖がる。次はキャリーにも入らない。さらにその次は、受診そのものが難しくなる。そうなると、病気の早期発見や治療の機会を逃してしまいます。
キャリーを病院専用にしない
猫や小型犬では、キャリーを見ただけで逃げることがあります。これは「キャリー=病院」と覚えているためです。
普段から部屋にキャリーを出しておき、中に毛布を入れたり、おやつを置いたりします。キャリーを安心できる場所にしておくと、通院時の負担が少なくなります。
移動中は、キャリーにタオルをかけて視界を少なくします。外の景色、人、車、犬の姿などを見せすぎない方が落ち着くことがあります。
病院でできる工夫
動物病院側にもできることがあります。
待合室で犬と猫の距離を取る。猫のキャリーを床に置かず、高い場所に置けるようにする。診察室ではすぐにキャリーから引きずり出さず、少し時間を置く。滑りにくいマットを使う。おやつを使いながら診察する。
こうした小さな工夫で、怖さが減ることがあります。
猫では、首の後ろを強くつかむ保定は、現在では推奨されにくくなっています。おとなしく見えても、実際には怖くて固まっているだけのことがあります。
「暴れないから大丈夫」ではなく、「怖くて動けないのかもしれない」と考える視点が大切です。
薬を使った方がよいこともあります
とても怖がる犬や猫では、来院前に薬を使うことがあります。
ガバペンチンやトラゾドンなどの薬を、受診の前に自宅で飲ませる方法です。これは「おとなしくさせるため」だけではありません。
→ ガバペンチン 痛み止め?猫の通院前のお薬?
強い恐怖を感じる前に不安を下げ、診察や検査を安全に行い、新しいトラウマを作らないための方法です。
少しずつ慣らすことも治療の一部です
病院嫌いを完全になくすことは難しいかもしれません。それでも、少しずつ慣らすことはできます。
キャリーに入れたらおやつ。車に乗ったらおやつ。病院の前まで行って帰るだけ。診察がない日に、受付でおやつをもらって帰るだけ。
こうした練習を重ねると、「病院に行く=必ず嫌なことが起きる」という記憶が少しずつ変わっていきます。
爪切りや耳掃除も同じです。全部を一度に終わらせようとせず、今日は足を触るだけ、今日は爪切りを見せるだけ、今日は1本だけ、というように小さく分けるとよいことがあります。
病院嫌いは、相談してください
犬や猫が動物病院を嫌がると、飼い主さんもつらくなります。
「連れて行くだけでかわいそう」
「また暴れたらどうしよう」
「先生やスタッフに迷惑をかけるかもしれない」
そう感じて、受診を先延ばしにしてしまうこともあります。
でも、病院嫌いは相談してよい問題です。
予約時間を工夫する。車で待つ。猫は犬と離れた場所で待つ。診察の順番を変える。必要なら来院前の薬を使う。できることは一つではありません。
動物病院は、病気だけを見る場所ではありません。犬や猫ができるだけ怖がらずに診察を受けられるように考えることも、医療の一部です。