犬や猫の腫瘍が再発すると、「また手術を受けるべきだろうか」「抗がん剤をもう一度続ける意味はあるのだろうか」「もう治療はやめた方がよいのだろうか」と悩まれるご家族は少なくありません。
再発したからといって、必ず治療を諦める必要はありません。反対に、再治療を選ぶことが必ず正解というわけでもありません。大切なのは、「治療をするか」ではなく、その治療によって何を得られる可能性があるのかを考えることです。
執筆:圓尾 拓也(腫瘍科認定医・獣医学博士)
「再発した」という事実だけで判断しない
同じ「再発」でも、その状況はさまざまです。手術した場所だけに再発した場合もあれば、リンパ節や肺などへ転移して見つかることもあります。また、数か月で再発することもあれば、何年も再発せずに過ごした後に見つかることもあります。
このように、再発までの期間や腫瘍の広がり、これまで受けた治療の内容によって、治療の考え方は大きく変わります。そのため、「再発した」という事実だけで、再治療の価値を判断することはできません。
前回の治療で得られた時間を振り返る
再治療を考えるときに重要なのは、前回の治療によってどのくらい良い時間を過ごせたかです。手術後に長期間再発せず生活できた、抗がん剤で食欲や元気が戻った、放射線治療で痛みが改善したなど、治療によって生活の質が保たれていたのであれば、再治療でも同じような効果が期待できる可能性があります。
一方で、治療後すぐに再発した場合や、前回ほとんど効果が得られなかった場合には、同じ治療を繰り返すよりも、別の治療や緩和ケアを検討した方がよいこともあります。
治療の目的は「完治」だけではない
再発後の治療は、必ずしも腫瘍をなくすことだけが目的ではありません。呼吸を楽にする、痛みを和らげる、食欲を取り戻す、普段どおり散歩できるようにするといったように、生活の質(QOL)を改善することも大切な治療の目的です。
そのため、「あと何か月生きられるか」という数字だけでなく、「その時間をどのように過ごせるか」という視点も重要になります。
治療は途中で見直してもよい
再治療を始めたからといって、最後まで続けなければならないわけではありません。あらかじめ「まず1回治療して反応を見る」「数週間後に効果を評価する」といった目標を決めて始める方法もあります。
期待した効果が得られなかった場合や、副作用や通院の負担が大きくなった場合には、緩和ケアへ切り替えることも適切な選択です。治療を中止することは、決して失敗ではありません。
まとめ
再発した腫瘍では、「治療するか、しないか」という二択ではなく、前回の治療でどのような時間を過ごせたのか、今回の治療で何を期待できるのか、その子にとって負担と利益のバランスはどうかを一緒に考えることが大切です。
再治療を選ぶことも、緩和ケアを選ぶことも、その子の生活を大切にするための選択です。**「何か月延びるか」ではなく、「その時間をどう過ごせるか」。**その視点で考えることが、ご家族にとって納得できる治療方針につながります。
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