犬や猫のまぶたにできる「イボ」や「しこり」は、日常診療でよくみられる異常の一つです。小さいうちは痛みもなく、「良性なら様子を見てもよいのでは?」と思われることもあります。
しかし、まぶたは単なる皮膚ではありません。眼球を守り、まばたきによって涙を角膜全体に広げ、目の表面を健康に保つ重要な器官です。そのため、たとえ良性の腫瘍でも、できる場所や大きさによっては角膜を傷つける原因になります。
執筆:圓尾 拓也(腫瘍科認定医・獣医学博士)
犬では良性の眼瞼腫瘍が多い
犬のまぶたの腫瘍では、マイボーム腺腫などの良性腫瘍が多くみられます。特に中高齢犬でよくみられ、数か月かけてゆっくり大きくなることがあります。
一方で、すべてが良性とは限りません。見た目だけでは良性・悪性を完全に判断できないため、増大が速い、出血する、色が変わる、形が崩れてくる場合には詳しい検査が必要です。
猫のまぶたのしこりはより注意
猫では犬より眼瞼腫瘍の発生は少ないものの、扁平上皮癌などの悪性腫瘍が問題になることがあります。
特に白猫や色素の薄い猫では、紫外線の影響を受けやすく、まぶたや耳、鼻の周囲に扁平上皮癌が発生することがあります。
→ 犬猫の皮膚扁平上皮癌|白い毛の子は日光に注意?
「小さなかさぶた」「治りにくい傷」に見えることもあるため、長期間治らない場合には早めの受診が大切です。
ものもらいとの違いは?
まぶたのしこりがすべて腫瘍とは限りません。
細菌感染による麦粒腫では、短期間で赤く腫れ、痛みや膿を伴うことがあります。霰粒腫では、マイボーム腺の分泌物が詰まり、ゆっくりとしこりが形成されます。
これらは腫瘍と見た目が似ることがあるため、外見だけで判断するのは難しい場合があります。
→ 犬・猫のしこり検査まとめ|細胞診・生検・画像検査の違いと選び方
良性でも放置しない方がよい理由
まぶたの腫瘤で最も問題になるのが、角膜への摩擦です。
まばたきのたびに腫瘤が角膜に触れると、小さな傷が繰り返し生じます。最初は涙が増える、目をしょぼしょぼする程度でも、刺激が続くと角膜潰瘍へ進行することがあります。
また、腫瘤が大きくなると、まぶたが完全に閉じにくくなったり、涙を均一に広げられなくなったりして、角膜表面が乾燥しやすくなります。
つまり、「転移しない良性腫瘍」であっても、目そのものには悪影響を与える可能性があります。
→ 犬・猫の良性腫瘍は手術が必要?切除する場合と様子を見る基準
小さいうちの方が手術しやすい
眼瞼腫瘤は、小さい段階であれば比較的単純な切除で対応できることがあります。
しかし、大きくなってから切除すると、まぶたを大きく切除する必要が生じ、単純に縫い合わせるだけでは形を保てなくなる場合があります。その場合は、眼瞼形成術など、より複雑な再建手術が必要になります。
そのため、「良性だから急がなくてもよい」ではなく、「小さいうちだからこそ治療しやすい」という考え方が重要です。
早めに受診したいサイン
まぶたのしこりが少しずつ大きくなる、角膜に触れている、目をしょぼしょぼする、涙が増える、出血する、表面がただれる、数週間たっても治らない場合には、一度動物病院で確認してもらうことをおすすめします。
犬や猫の眼瞼腫瘤は、良性であっても「目に当たる場所にある」ということ自体が問題になることがあります。
小さいうちに診断し、必要であれば早期に治療することが、角膜を守り、将来的な大きな手術を避けることにつながります。
→ 犬・猫のしこり「経過観察」と言われたら?何をすべきか・受診の目安
▼ 犬のしこりについて全体を知りたい
→ 犬のしこりの見分け方・受診の目安・検査と治療
▼ しこりや腫瘍について相談したい方へ
→ 腫瘍診療について
