犬は人のように全身から汗をかいて体温を下げることができません。主な体温調節は、口を開けて速く呼吸する「パンティング」です。舌や口腔、上部気道から水分を蒸発させ、その気化熱によって体を冷やしています。
そのため、気温や湿度が高くなり、パンティングによる放熱が追いつかなくなると、急速に体温が上昇します。特に注意したいのが、短頭種、肥満犬、高齢犬です。
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執筆:圓尾 拓也(腫瘍科認定医・獣医学博士)
短頭種は空気を通しにくい
フレンチ・ブルドッグ、パグ、シーズーなどの短頭種では、鼻孔が狭い、軟口蓋が長い、舌が大きいなどの特徴があり、「短頭種閉塞性気道症候群(BOAS)」を伴うことがあります。
犬は暑くなるほど大量の空気を上部気道に通して熱を逃がそうとします。しかし気道が狭い犬では空気を動かすための呼吸仕事量が増える一方、十分な気流を確保できません。そのため激しくパンティングしていても冷却が追いつかず、体温が上昇しやすくなります。
短頭種が暑さに弱いのは、単に「鼻が短いから」ではなく、熱を逃がすために必要な気道そのものが狭いことが大きな理由です。
肥満犬は運動による産熱も増える
肥満犬も熱中症のリスクが高くなります。体重が重いほど、同じ距離を歩くにも多くの筋肉活動が必要になります。
筋肉が使ったエネルギーの多くは最終的に熱になります。そのため太った犬では、少し歩いただけでも体内で多くの熱が発生します。さらに胸部や頸部の脂肪が呼吸を妨げることもあり、「熱が多く作られるのに、逃がしにくい」という状態になります。
高齢犬は心肺機能や移動能力にも注意
高齢犬では、心臓病、気管虚脱、喉頭麻痺、腎臓病などの基礎疾患を抱えていることが増えます。
熱を逃がすには、パンティングだけでなく、心臓が十分な血液を皮膚や呼吸器粘膜へ送り届ける必要があります。心肺機能が低下している犬では、この余力が少なくなります。
また、関節炎や筋力低下によって、自分で涼しい場所へ移動したり水を飲みに行ったりできない犬もいます。
熱中症は「体温が高いだけ」ではない
重度の熱中症では、脳、腎臓、消化管、血液凝固系など全身に障害が及び、DICや多臓器不全へ進行することがあります。
異常に激しいパンティング、ぐったりする、ふらつく、嘔吐や下痢、意識がおかしいといった症状があれば緊急事態です。
短頭種、肥満犬、高齢犬では、「ほかの犬が大丈夫だから大丈夫」とは考えず、気温だけでなく湿度、直射日光、運動量にも注意することが重要です。暑さに弱い犬ほど、熱中症になってから治療するより、暑い環境そのものを避けることが最も確実な予防になります。
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