犬と猫の放射線治療「やるべきか迷ったら読む」効果・副作用・費用

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執筆:圓尾 拓也(放射線取扱主任者・獣医学博士)

放射線治療ってなに?

放射線治療で使用する放射線は、健康診断で受けるレントゲンの“強力版”。放射線の役割は、がん細胞の中にある「設計図(DNA)」を壊すことです。設計図が壊れた細胞は増えることができなくなり、時間をかけて減っていきます。

治療のイメージは「ハサミで切る」ではなく「じわじわ縮める」です。手術はその場で取り除く治療ですが、放射線は照射後に数週間から数ヶ月かけて効果が現れます。すぐに変化が見えないこともありますが、見えないところで確実に変化は始まっています。照射中の痛みはなく、動かないようにするために短時間の麻酔で眠っているだけです。

◾️放射線治療で一番気になるところ
・効きやすい腫瘍は?
放射線治療適応
・どれくらい効くか
放射線治療効果
・副作用は
放射線治療の副作用
◾️現実的な負担
・麻酔について
放射線治療の麻酔
・通院のイメージ
放射線治療スケジュール
・体調の変化
放射線治療の体調管理

どんなときに使うの?

1. 手術で取り除くのが難しい場所
鼻腔内腫瘍: 構造が複雑で、手術が難しい場所です。腺癌、扁平上皮癌、骨肉腫などがあります。
脳腫瘍: ダメージを抑えつつピンポイントで狙えます。髄膜腫、グリオーマ、下垂体腫瘍などがあります。
口腔内腫瘍: 顎の骨を大きく削る手術を避けたい場合に検討します。悪性黒色腫(メラノーマ)、扁平上皮癌、棘細胞性エナメル上皮腫などがあります。

2. 手術のあとの「仕上げ」
手術で取り切ったつもりでも、目に見えない細胞が残ってしまうこと(マージン+)があります。その「残りカス」を全滅させて再発を防ぎます。軟部組織肉腫、肥満細胞腫の術後照射が有名です。

3. 痛みや苦しさを和らげるため(緩和ケア)
骨の腫瘍による痛みや、大きな腫瘍による出血・圧迫を抑え、穏やかに過ごすためにも非常に有効です。四肢の骨肉腫の疼痛緩和が当てはまります。

放射線治療の目的は2つ

1. 「根治(こんち)」目的:しっかり治す
がんと正面から戦い、消滅や長期の再発防止を目指します。
回数: 週に数回、合計10回以上通う(入院)ことが多い。
対象: 体力があり、しっかり治る見込みがある場合(転移しにくい、ステージが軽い、元気な子など)。

2. 「緩和(かんわ)」目的:穏やかに過ごす
苦しみを取り除くことを最優先にします。
回数: 週1回を計4回など、通院負担を軽くします。
対象: 高齢であったり、完治は難しくても痛みだけは取ってあげたい場合。

3. 【いいとこ取り】少ない回数でしっかり治す(定位照射・手術的照射)
条件が揃えば、少ない回数でピンポイント照射を行う方法もあります(以前は肺の照射で有名でした)。肺や肝臓、脳などで腫瘍が小さい場合に検討することがあります。

どのくらい効くの?

3頭中2頭(60~70%)で「腫瘍が小さくなる、または成長が止まる」効果が見られます。完全に消える場合もありますが、すべての症例で期待できるわけではありません。期待が持てるのは、「生活の質(QOL)」の改善です。痛みが取れて食事ができるようになる、元気が戻るといった変化です。この治療の価値は、単なる延命ではなく「苦痛のない時間を増やすこと」にあります。

心配な副作用について

1. 治療中~直後(急性副作用)
皮膚の炎症・脱毛: あてた場所が少し赤くなる「日焼け」のようなイメージ。
粘膜の炎症: 口の中など、一時的にヒリヒリすることがあります。
• これらは数週間で自然に落ち着きます。

2. 数ヶ月~数年後(晩期副作用)
毛色の変化: 黒い毛が白くなって生えてくることがあります。
組織の変性: まれに組織が少し硬くなることがあります。
• 組織の壊死:発生率5%以下とされています。最近はテクノロジーの進歩によりさらに減る可能性があります。

知っておいてほしい「デメリット」

1. 毎回「全身麻酔」が必要です
1ミリでもズレを減らしたいので、毎回短時間の麻酔をかけます。高齢や持病があると、麻酔のあと数日は元気がない、下痢・嘔吐、水を飲まないなどの症状が出ることが経験上、10頭中数頭で起こります。そのため、動物病院の通院が増えることがあります。

2. 通院回数が多い
効果を最大にするには、4~6週間ほど根気強い通院が必要になることがあります。

3. 費用が高額になりやすい
特殊な装置(5~10億円)と専門スタッフ(放射線取扱主任者)が必要なため、費用はどうしても高くなります。リニアックという人と同じ機械を使うと合計で100~200万円になります。オルソボルテージという機械(数千万円)ですとリーズナブルになりますが、それでも全身麻酔が毎回必要ですので数十万円はかかります。

⑦ この治療が向いているのは

こんな場合に有効です
・手術が難しい場所の腫瘍
・痛みや出血で生活の質が落ちている
・麻酔に耐えられる体力がある

症状改善を強く願いますが、実際に効果が出るのは3頭中2頭(60〜70%)です。照射できてもすべてがハッピーとは限りません。迷われている場合は、「何を優先したいか(延命か、生活の質か)」を一考えることが大切です。

放射線治療:切除ができないときだけ?
放射線治療適応:こんな子がいいです
放射線治療効果:小さくならない?
放射線治療の副作用:意外と少ないです
放射線治療の麻酔:こんなことに注意
放射線治療スケジュール:こんな感じです
放射線治療の体調管理:お願いしていました

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