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執筆:圓尾 拓也(腫瘍科認定医・獣医学博士)
鼻腔腫瘍の診断はCTで行われることが基本です。鼻腔腫瘍はくしゃみや鼻水という症状が多く、鼻腔腫瘍に特徴的な症状に乏しい。そのためアレルギー性鼻炎と区別が難しい。このような状態ではCT撮影を提示できないため発見が遅れます。進行すると顔の変形や脳への影響(神経症状)が出て鼻腔腫瘍が強く示唆されます。このような状態でのCT撮影となりますと、診断が遅れるという非常に厄介ながんです。現在の治療スタンダードをステージ別に整理します。
1. 外科手術の役割:根治ではなく「緩和」
鼻腔内は構造が複雑なため、メスだけで腫瘍を完全に取り切ることは困難です。
• 目的: 鼻の通りを良くする、鼻出血を抑えるといったQOL(生活の質)の改善。
• 考え方: 手術単独で完治を狙うのではなく、他の治療と組み合わせるか、苦痛を取り除くための選択肢と考えます。
2. 早期~中期 ステージ1~2:長期制御を目指す「攻め」の治療
腫瘍が鼻腔内に留まっているステージ1~2(片側もしくは両側の鼻に限局)の段階では、侵襲の強いもしくは高精度な治療が第一選択となります。
① アクリジンオレンジ光線力学療法(PDT) ※主にステージ1
• 特徴: 腫瘍切除を行い、残った腫瘍細胞にアクリジンオレンジを取り込ませ、がん細胞に光を当てます。これによりアクリジンオレンジが腫瘍を殺します。
② 定位放射線治療(SRS/SRT) ※ステージ1~2に最適
CT検査で浸潤が限定的と判断された場合、非常に有効な選択肢です。
• ピンポイント照射: 腫瘍の形に合わせて高エネルギーを集中させます。
• 副作用の軽減: 眼球や脳などの重要組織を避けられるため、合併症リスクが低いです。
3. 中期~進行期 ステージ2以上:標準的な放射線治療
• 短期決戦: 通常の放射線より回数を少なく(1~3回等)設定でき、通院負担を減らせます。
周囲組織への浸潤が始まっている場合、放射線治療が第一選択となります。鼻腔腫瘍は放射線への感受性が比較的高いため、局所をコントロールする上で欠かせない治療です。
4. 末期・進行期 顔面変形・脳浸潤がある場合
すでに顔の形が変わっていたり、腫瘍が脳に達して神経症状が出ている場合は、無理な積極的治療よりも緩和放射線治療や緩和ケアを優先すべき局面です。
• 最優先事項: 出血や呼吸の苦しさを取り除くこと。
• サポート: 残された時間を穏やかに家族と過ごすための、痛み止めや二次感染防止を主軸にします。
5. 緩和 放射線治療以外の選択肢
固形がんにも化学療法を行うことがあります。これにより鼻出血が止まったり、腫瘍の縮小を得られることがあります。分子標的薬(パラディア)による治療も効果が報告されています。また、猫ではリンパ腫が多く、化学療法が選択されることも多いです。
まとめ:愛犬・愛猫に合わせた「後悔しない選択」を
鼻腔腫瘍の治療において最も大切なのは、「現在の正確なステージを知り、その子にとっての最優先事項(根治なのか、痛みを取ることなのか)を決めること」です。
放射線治療や光線力学療法など、医療の進歩により選択肢は広がっています。「もう高齢だから」「顔が変わってしまったから」と諦める前に、まずは専門的な知見を持つ獣医師にご相談ください。
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