ホーム > 腫瘍まとめ > 治療 > がんと食事について:『糖質制限』より『体重維持』が重要な理由
執筆:圓尾 拓也(腫瘍科認定医・獣医学博士)
結論:迷ったらこれを
「何を食べさせればいい?」という問いへの、現時点での腫瘍学的な正解はこれですかね。
• ヒルズ:a/d(回復期ケア)
• ロイヤルカナン:退院サポート
これらは「高タンパク・高脂質・低炭水化物」に設計されており、がん細胞にエネルギー(糖)を与えず、筋肉を維持するために作られています。人も健康の維持には筋肉が重要とされ、手術後も早期の運動が推奨されています。動物も同じです。
1. 「糖質制限」の罠:痩せさせてはいけない
がん細胞は糖分(ブドウ糖)をエサに増殖します。理論上、糖質制限は正しいのですが、「糖質を抜くあまり、本人の体重が落ちる」のが一番の命取りです。
がんの末期には「がん悪液質(あくえきしつ)」という状態になり、筋肉や脂肪が恐ろしいスピードで削られていきます。「がんを飢えさせる前に、本人が餓死してしまう」。これが糖質制限の最大の失敗です。
がんとの戦いは、一言で言えば「体内のタンパク質(筋肉)の奪い合い」です。
がん細胞は増殖のエネルギーとして糖分だけでなく、本人の筋肉を分解してアミノ酸を奪い取ります。これが進むと、骨と皮だけの「がん悪液質」に陥ります。
2. 狙いは「良質な動物性タンパク質」
植物性(大豆など)よりも、アミノ酸バランスが整った動物性タンパク質が、効率よく筋肉の維持に貢献します。
• 最強のトッピング:鶏ささみ・胸肉(茹でたもの)
低脂質で高タンパクの王道です。a/dをあまり食べない時、まずはこれを混ぜてください。
• 「卵」はスーパーフード:
アミノ酸スコア100の卵は、非常に優秀なタンパク源です。ただし、「白身は必ず加熱」して与えてください(生の白身はビタミン吸収を阻害するため)。黄身は生でもOKで、良質な脂質も補給できます。
3. 獣医師からの警告:腎臓とのバランス
ここで一点、非常に重要な「引き際」があります。
もし、愛犬・愛猫に「腎不全(CKD)」がある場合は、高タンパク食は腎臓への大きな負担(毒素の増加)になります。
• 血液検査でCREやBUNが高い: 独断で高タンパクにするのは危険です。
• だから: 「がんと腎臓、どちらのケアを優先すべきか」を、必ずステージに合わせて我々と相談してください。
2. 脂肪の選び方:オリーブオイルより「青魚の油」
「脂肪がいいならオリーブオイル」はおすすめしません。がんとの戦いには、炎症を抑える「オメガ3脂肪酸(EPA・DHA)」が必要です。
• 推奨:サバ缶(水煮・食塩不使用)
サプリ(魚油)もありますが、代用ならスーパーの「食塩不使用のサバ・イワシ缶」や「刺身(血合いを含む)」が優秀。
※アマニ油等は犬猫の体内ではEPA・DHAに変換されにくいため、魚由来が一番効率的です。
3. 高脂肪食の天敵「下痢」を防ぐ裏技:サイリウム
a/dのような高脂質食は下痢や膵炎を起こしやすいのが難点。ここで役立つのが水溶性食物繊維の「サイリウム」です。
• 使い方: a/dをお湯で少し緩め、耳かき1杯~指先ひとつまみを混ぜるだけ。
• 注意: サイリウムは水分を強力に吸うため、必ず水分(スープやぬるま湯)を多めに足してください。これで脂肪をがっちり包み込み、理想的な便にしてくれます。
4. 「食べない」が最大のピンチ
どんなに優れた食事も、食べなければ意味がありません。がん治療において「食べないこと」は「治療の断念」に直結します。
1. まずは療法食(a/dなど)を試す
2. 食べなければ、トッピングで口にするものを探す
3. 最終的には「アイスクリームでもカステラでも、食べるなら何でもいい」
「正しい食事」より「食べられる食事」を優先する。 これが、後悔しないための食事管理の鉄則です。
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獣医師 圓尾真理
獣医師 圓尾拓也
日本獣医がん学会 腫瘍科認定医1種(I種)
放射線取扱主任者1種
博士(獣医学)
エビデンスにもとづいた情報発信に努めます。
