腫瘍トップ > 種類 > 皮膚扁平上皮癌:白い毛の子は特に注意?日光とガンの関係― ただの「日焼け」や「傷」だと思っていませんか? ―
執筆:圓尾 拓也(腫瘍科認定医・獣医学博士)
「耳の縁が少し赤い」「鼻の頭にかさぶたができている」
そんな、一見すると些細な皮膚のトラブルが、実は進行性のガンであることがあります。それが扁平上皮癌(へんぺいじょうひがん)です。
特に白い毛色の猫ちゃんや、被毛の薄いワンちゃんにとって、太陽の光(紫外線)は時として恐ろしい病気の引き金となります。
しこりについて全体像を知りたい方は「腫瘍トップ」をご覧ください。
1. なぜ「白い子」が狙われるのか?
扁平上皮癌は、皮膚の表面にある細胞がガン化する病気です。最大の原因の一つは紫外線によるダメージの蓄積です。
• メラニン色素の不足: 白い毛や皮膚には、紫外線をブロックするメラニン色素が少ないため、ダメージが直接細胞のDNAに届いてしまいます。
• 好発部位: 猫ちゃんでは「耳の先端」「鼻の頭」「まぶた」。ワンちゃんでは毛の薄い「お腹(日光浴で仰向けになる子)」などに多く発生します。
2. 見逃してはいけない「初期サイン」
このガンの恐ろしいところは、初期には「ただの傷」や「皮膚炎」にそっくりなことです。
• 治らないかさぶた: 薬を塗っても治らない、あるいは一度治ってもすぐに繰り返す。
• 潰瘍(かいよう): 皮膚がジクジクして、えぐれたようになる。
• カリフラワー状の盛り上がり: 進行すると、表面がゴツゴツと盛り上がってきます。
「喧嘩の傷かな?」と放置している間に、ガンは深く、広く根を張っていきます。
3. 治療の戦略:早ければ「完治」も狙える
扁平上皮癌は、他の臓器への転移は比較的緩やかですが、「局所での浸潤(深掘り)」が非常に強いのが特徴です。
① 外科手術:確実な切除
耳の先端であれば耳介の切除、鼻であれば広範囲の切除を行います。見た目の変化を伴うこともありますが、早期に適切なマージン(切除範囲)を確保して取り切ることができれば、完治が十分に期待できます。
② Mohs(モーズ)ペースト:切れない場合の有力な選択肢
腫瘍が大きく手術が難しい場合や、出血・感染が激しい場合に用いられる特殊な外用薬(塩化亜鉛ペースト)です。
• 効果: ガン細胞を化学的に固定(ミイラ化)させ、腫瘍を自壊させたり、出血や嫌な臭いを劇的に抑えたりすることができます。
• メリット: 全身麻酔がかけられない高齢の子でも、局所の処置として痛みの緩和やQOL維持に大きく貢献します。
③ 放射線治療:「切らずに治す」あるいは「術後のダメ押し」
鼻の頭やまぶたなど、手術で大きく取ることが難しい場所において、放射線治療は極めて強力な武器になります。
• 効果: 扁平上皮癌は放射線への感受性が高く、初期であれば照射のみで腫瘍を消失させることも可能です。
• 負担の軽減: 外見の変化を避けたい場合や、大きな手術を避けたい高齢の子の選択肢となります。
④ 外用薬・内科療法
非常に初期(日光角化症の段階)であれば、イミキモドクリームなどの外用薬や、非ステロイド性抗炎症薬(ピロキシカムなど)で進行を遅らせることを狙います。
4. 日常でできる「予防」と「対策」
• UVカット: 紫外線が強い時間帯(10時~14時)の外出や日光浴を控える。
• UVカットフィルム: 室内でも窓際にいることが多い子は、窓にUVカットフィルムを貼るのが効果的です。
• 毎日のチェック: スキンシップの際に、白い皮膚の部分に赤みや「カサつき」がないか確認してください。
まとめ:その「赤み」、一度診せてください
皮膚扁平上皮癌は、早期発見・早期治療ができれば、決して怖い病気ではありません。しかし、放置して骨まで浸潤してしまうと、治療は一気に困難になります。
「ただの傷かな?」と迷ったら、手遅れになる前に、ぜひご相談ください。その子のQOLを守りながら、最適な治療計画を立てていきましょう。
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獣医師 圓尾真理
獣医師 圓尾拓也
日本獣医がん学会 腫瘍科認定医1種(I種)
放射線取扱主任者1種
博士(獣医学)
エビデンスにもとづいた情報発信に努めます。
