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執筆:圓尾 拓也(腫瘍科認定医・獣医学博士)
猫が「急に食べなくなった」とき、口の中に原因があることがあります
「最近、ごはんを残すようになった」「食べたい様子はあるのに、途中でやめてしまう」このような変化が見られたとき、口の中のトラブルが原因になっていることがあります。特に注意したいのが、口腔内腫瘍、つまり口の中にできるがんです。猫では比較的多く、しかも進行してから見つかることが多い腫瘍のひとつです。
猫の口腔内腫瘍の多くは悪性です
猫の口の中にできる腫瘍は、その多くが悪性腫瘍です。中でも代表的なのは扁平上皮癌で、進行が早く治療が難しいことが多い腫瘍です。そのほか線維肉腫なども見られます。犬で比較的多い悪性黒色腫(メラノーマ)は、猫ではまれです。
「食べない」以外にも見逃されやすいサイン
猫は痛みを隠す動物のため、症状が分かりにくいことがあります。食欲低下だけでなく、食べるのが遅くなる、硬いものを避けるといった変化も重要なサインです。また、口を気にするしぐさやよだれの増加、口臭の悪化、顔の腫れや左右差、出血などが見られることもあります。これらの症状は歯周病と非常によく似ているため、「歯のトラブルだろう」と思って受診されるケースも多くあります。
なぜ発見が遅れやすいのか
猫の口腔内腫瘍が見つかりにくい理由はいくつかあります。まず、口の奥にできることが多く、外から見えにくいこと。さらに、猫は口を触られるのを嫌がるため、家庭でのチェックが難しい点もあります。加えて、症状が歯周病と似ているため、気づいたときにはすでに進行していることも少なくありません。
検査で何がわかる?
口腔内腫瘍が疑われる場合には、まず視診や触診で状態を確認します。そのうえで、細胞診や生検によって腫瘍の性質を調べ、必要に応じてレントゲンやCTで骨への広がりを評価します。確定診断には、生検が必要になることが多いです。
治療の選択と現実
猫の口腔内腫瘍は、治療が難しいケースが多い腫瘍です。手術や放射線治療、抗がん剤といった選択肢はありますが、発見時にはすでに広がっていることも多く、完全に取り切ることが難しい場合も少なくありません。そのため実際の診療では、根治よりも生活の質(QOL)を重視した治療になることが多いのが現実です。進行したケースでは、食事が難しくなるため、栄養を維持する目的で胃瘻チューブの設置が選択されることもあります。これは生活の質を保つうえで有効な手段とされています。
様子を見るべき?それとも受診?
結論として、「食べない」状態が数日続く場合、様子見はおすすめできません。特に、食欲低下が3日以上続く場合や、よだれ・出血・顔の腫れなどがある場合は、早めの受診が必要です。早期に発見できれば、それだけ選択肢も広がります。
まとめ|「食べない」は重要なサインです
猫の口腔内腫瘍は、悪性が多く、発見が遅れやすく、治療が難しいこともある腫瘍です。だからこそ、「ただの食欲不振」と軽く考えず、変化に気づいた時点で行動することが大切です。
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