カルボプラチンは、犬や猫の腫瘍治療で使われる抗がん剤のひとつです。白金製剤と呼ばれる薬で、腫瘍細胞のDNAに作用し、細胞が増える過程を妨げます。
動物病院では、骨肉腫、悪性黒色腫、尿路上皮癌、肛門嚢アポクリン腺癌、血管肉腫など、いくつかの悪性腫瘍で使われることがあります。
私自身、希釈したものを皮下投与できないか、放射線増感剤として組み合わせができないか研究していた薬剤で思い入れもあるお薬です。
カルボプラチンはどんな薬?
カルボプラチンは、昔から使われてきたシスプラチンという抗がん剤を改良した薬です。シスプラチンは強い抗腫瘍効果を持つ一方で、腎臓への負担や強い吐き気が問題になることがあります。また、猫では重い肺毒性を起こすため、基本的に使えません。
カルボプラチンは、シスプラチンに比べると腎毒性や急性の嘔吐が少なく、犬だけでなく猫にも使える薬です。そのため、現在の獣医腫瘍診療ではよく使われる抗がん剤のひとつになっています。
どんな腫瘍で使う?
カルボプラチンは、腫瘍を完全に消す薬というより、手術や放射線治療と組み合わせて、目に見えない腫瘍細胞の増殖を抑える目的で使われます。
たとえば犬の骨肉腫では、断脚などの局所治療だけでは肺などへの転移が問題になります。そのため、術後にカルボプラチンを行い、微小転移の進行を遅らせることがあります。
口腔メラノーマ、膀胱移行上皮癌、肛門嚢腺癌、血管肉腫などでも、病期、手術の可否、転移の有無、全身状態を見ながら使用を検討します。
注意すべき副作用
カルボプラチンで最も注意する副作用は、骨髄抑制です。骨髄抑制とは、白血球や血小板などの血液細胞が減ることです。特に好中球が減ると感染に弱くなり、血小板が減ると出血しやすくなることがあります。
この副作用は、投与直後ではなく、数日から2週間前後で出てくることがあります。そのため、抗がん剤を投与したあとに元気そうに見えても、予定された血液検査はとても重要です。
食欲不振、吐き気、嘔吐、下痢などの消化器症状が出ることもあります。多くは一時的ですが、ぐったりする、食べない、吐き続ける、下痢が強い、発熱が疑われる場合は早めの相談が必要です。
腎臓の確認が大切
カルボプラチンは主に腎臓から排泄されます。そのため、投与前には血液検査や尿検査で腎機能を確認します。腎機能が低下している場合、薬が体内に残りやすくなり、副作用が強く出る可能性があります。
「シスプラチンより腎臓にやさしい」とはいえ、腎臓を無視してよい薬ではありません。
小型犬では特に慎重に
カルボプラチンは、体格によって副作用の出方が変わることがあります。特に小型犬では、体表面積をもとにした計算だけでは相対的に投与量が多くなり、骨髄抑制が強く出ることがあります。
そのため、体重、腎機能、過去の副作用、腫瘍の種類、治療目的を総合して、投与量や投与間隔を慎重に決めます。
まとめ
カルボプラチンは、腫瘍診療でよく使われる白金製剤の抗がん剤です。シスプラチンに比べて腎毒性や急性の吐き気が少なく、猫にも使いやすい一方で、骨髄抑制には注意が必要です。そのため、投与前後の血液検査、腎機能の確認が重要となります。