抗がん剤の効果は、腫瘍が消えたCR、小さくなったPR、ほぼ変わらないSD、大きくなったPDに分類されます。
執筆:圓尾 拓也(腫瘍科認定医・獣医学博士)
抗がん剤の効果は腫瘍の大きさで判定する
抗がん剤を始めたあと、「効いていますか」と聞かれることがあります。腫瘍が小さくなれば効いているように見えますが、数ミリの変化だけでは測定誤差かもしれません。そのため、治療前と治療後の腫瘍を同じ方法で測定し、CR、PR、SD、PDの4段階に分類します。
犬の固形腫瘍では、cRECISTという基準がよく使われます。基本的には、測定する腫瘍をあらかじめ決め、その最長径を合計して比較します。体積ではなく、腫瘍の「直径の合計」で評価することがポイントです。腫瘍の種類や臨床試験によっては、別の判定基準が使われることもあります。
CR・PR・SD・PDの違い
CRはcomplete response、完全奏効です。確認できる腫瘍がすべて消失した状態を指します。ただし、画像や触診で見えなくなったという意味であり、腫瘍細胞が一つも残っていないことや、完治を保証する言葉ではありません。
PRはpartial response、部分奏効です。治療前と比べて、標的とした腫瘍の直径の合計が30%以上小さくなった状態です。たとえば、直径5cmの腫瘍が4cmになった場合、直径は20%の縮小なのでPRには届かず、判定上はSDになります。見た目には明らかに小さくなっていても、決められた境界を超えなければPRとは呼びません。
SDはstable disease、安定病変です。PRと判定するほど小さくなっておらず、PDと判定するほど大きくもなっていない状態です。SDというと「抗がん剤が効かなかった」と感じるかもしれません。しかし、治療しなければ大きくなる腫瘍が一定期間変化していないのであれば、増殖を抑えている可能性があります。腫瘍を消すことだけでなく、大きくさせず、元気に過ごせる時間を延ばすことも治療の目的です。
PDはprogressive disease、進行病変です。治療開始後に最も小さかった時点と比べて、腫瘍径の合計が20%以上増加し、一定以上の実測増加がある場合や、新しい腫瘍病変が現れた場合に判定されます。
数字だけで抗がん剤を続けるかは決めない
効果判定は、治療を考えるための共通言語です。しかし、PRなら必ず治療を続け、PDなら直ちに中止する、という単純なものではありません。元気や食欲、副作用、腫瘍による症状、治療の目的、ほかに選べる治療を合わせ、穏やかに過ごせる時間を少しでも長くできるよう考えます。
▼ 関連項目
→ 直径5cmの腫瘍が4cmに縮小。PRかSDか?(まるおどクイズ)
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