肝臓腫瘍は、肝臓に腫瘍がある、という状態でひとつの病気ではありません。良性の場合もあれば悪性の場合もあります。また、肝臓から発生した腫瘍なのか、他の臓器から転移してきた腫瘍なのかでも治療や見通しは大きく変わります。
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執筆:圓尾 拓也(腫瘍科認定医・獣医学博士)
肝臓腫瘍は転移のことも少なくありません
犬の肝臓に見つかる腫瘍は、肝臓そのものから発生する原発性腫瘍と、他の臓器から広がってきた転移性腫瘍に分けられます。
原発性腫瘍では、肝細胞癌が比較的よく見られます。そのほか、胆管癌や神経内分泌腫瘍などがあります。良性の肝細胞腺腫が見つかることもあります。
一方で、実際の診療では転移性腫瘍も少なくありません。脾臓の血管肉腫、消化管腫瘍、リンパ腫などが肝臓へ広がることがあります。
つまり、「肝臓に腫瘍があります」という言葉だけでは、まだ病名は決まっていません。まずは、どこから発生した腫瘍なのかを考えます。
肝臓は症状が出にくい臓器です
肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれています。かなり病気が進行するまで症状が出ないことも珍しくありません。そのため、健康診断の血液検査やエコー検査で偶然見つかることもあります。
症状が出る場合には、以下のような変化が見られることがあります。
・食欲が落ちる
・体重が減る
・元気がない
・嘔吐する
・下痢をする
・お腹が張ってくる
・水をよく飲む
・尿が増える
さらに進行すると、白目や歯ぐき、皮膚が黄色くなる黄疸が見られることがあります。これは肝機能が大きく低下したり、胆汁の流れが悪くなったりしたサインです。
血液検査だけでは診断できません
まず、血液検査で肝臓の異常が疑われるときがあります。ALT(GPT)やALPなどの肝臓の数値の上昇です。ただし、数値が高いから悪性とは限りません。逆に、数値がほぼ正常でも腫瘍が存在することがあります。血液検査だけで、良性か悪性かを判断することはできません。
超音波検査やCT検査が重要です
肝臓腫瘍では、画像診断がとても重要になります。超音波検査では、腫瘍の場所や大きさ、数を確認します。健康診断の段階では、まずエコー検査が行われることが多いです。
さらに手術を検討する場合には、CT検査が非常に重要になります。
・腫瘍が1つなのか
・複数あるのか
・大きな血管に接しているのか
・他の臓器に転移していないか
これらを詳しく調べます。特に、「切除できるかどうか」を判断する上でCT検査は大きな役割を持っています。
細胞診や生検は慎重に行います
確定診断には病理検査が必要になることがあります。ただし、肝臓は非常に血流が豊富な臓器です。そのため、針を刺して検査を行うと出血するリスクがあります。
もちろん安全に実施できることも多いですが、すべての症例で積極的に行うわけではありません。年齢、全身状態、手術予定の有無、転移の可能性などを考慮しながら、検査のメリットとリスクを比較して判断します。
治療の中心は手術です
犬の肝臓腫瘍で最も期待できる治療は外科手術です。腫瘍が1つに限局していて、転移がない場合には、腫瘍を含む肝葉ごと切除することで長期生存が期待できます。
肝臓は再生能力の高い臓器です。そのため、大きく切除しても残った肝臓が働きを補ってくれることがあります。もちろん、すべての症例で手術できるわけではありませんし、必要とは限りません。肝臓に広がったリンパ腫や肥満細胞腫がその例です。
手術できない場合は緩和ケアが中心になります
以下のような場合には、手術が難しいことがあります。
・複数の場所に腫瘍がある
・大きな血管に広がっている
・遠隔転移がある
・全身状態が悪い
この場合は、肝保護剤、食事療法、抗がん剤、吐き気止め、痛みの管理などを組み合わせながら生活の質を維持することを目指します。食べること、眠ること、散歩すること、家族と過ごすことを守ることも、大切な治療になります。
まずは病名をつけることが大切です
犬の肝臓腫瘍は、種類ごとに性質が大きく異なります。肝細胞癌なのか、血管肉腫の転移なのか、リンパ腫なのかによって、治療方法も予後も変わります。
「肝臓に腫瘍があります」と言われた時点では、まだスタートラインです。
超音波検査、CT検査、必要に応じた病理検査を行い、まず病名を明らかにすることが大切です。その上で、治療方針を考えましょう。
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