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執筆:圓尾 拓也(腫瘍科認定医・獣医学博士)
拡大切除は、悪性腫瘍の再発を減らすために重要な手術です。ただし、「大きく切れば必ず良い」というものではありません。腫瘍の性質、転移の可能性、術後の機能障害、生活の質(QOL)まで含めて、考える必要があります。
拡大切除とは
拡大切除とは、見えている腫瘍だけでなく、その周囲の正常に見える組織も含めて広く切除する手術です。悪性腫瘍は、しこりとして見えている部分の外側にも、顕微鏡レベルで広がっていることがあります。そのため、腫瘍だけをくり抜くように取ると、目に見えない腫瘍細胞が残り、再発の原因になることがあります。
この「どれくらい余裕を持って切るか」をマージンと呼びます。肥満細胞腫や軟部組織肉腫などでは、最初の手術で十分なマージンを確保できるかが、その後の再発リスクに大きく関わります。
大きく切れば必ず治るわけではない
一方で、拡大切除を行っても再発や転移がゼロになるわけではありません。手術は基本的に、目に見える腫瘍や局所に残る腫瘍細胞を減らす治療です。すでに体の中に微小転移がある場合、局所を大きく切っても、全身の病気として進行することがあります。
例えば、高悪性度の肥満細胞腫、血管肉腫、骨肉腫、悪性黒色腫などでは、局所の手術だけでなく、転移や全身治療の必要性を考える必要があります。つまり、拡大切除は強力な局所治療ですが、すべての腫瘍を解決する万能の治療ではありません。
機能障害とQOLの問題
拡大切除で大切なのは、腫瘍が取れるかどうかだけではありません。取ったあとに、どう暮らせるかです。
口の腫瘍で下顎や上顎を大きく切除すれば、食べ方や見た目が変わることがあります。胃瘻チューブによる管理が必要かもしれません。
そのような状態になれば、治療の目的を見失ってしまうことがあります。
手術適応は「切れるか」だけで決まらない
外科的に切除できることと、その手術を勧めることは同じではありません。手術適応とは、腫瘍の場所や大きさだけでなく、年齢、体力、持病、転移の有無、術後の機能障害、ご家族の希望まで含めて判断するものです。
若くて体力があり、転移がなく、十分なマージンを確保できる腫瘍であれば、拡大切除は大きな利益をもたらすことがあります。一方で、高齢で体力が落ちている、すでに転移がある、術後の生活が大きく損なわれる場合には、手術を控える判断もあります。
「取り切ること」と「幸せに過ごすこと」
腫瘍外科では、どうしても「取り切れるか」に意識が向きます。しかし本当に大切なのは、「取ることでその子がより良く過ごせるか」です。
再発を減らすことは大切です。寿命を延ばすことも大切です。ただし、食べる、歩く、眠る、家族と穏やかに過ごす。その時間が守られることも同じくらい大切です。
時には、少し再発リスクが残っても、機能の温存を優先することがあります。逆に、負担が大きくても根治を目指して拡大切除を選ぶこともあります。
まとめ
拡大切除は、悪性腫瘍の再発を減らすための重要な治療です。しかし、大きく切れば必ず良い結果になるわけではありません。再発や転移の可能性、術後の機能障害、痛み、回復期間、QOLを含めて考える必要があります。
手術としては成功しても、その後の管理にご家族が大きな負担を感じることがあります。たとえば、食べる機能が落ち、胃瘻チューブによる管理が必要になる場合もあります。手術の評価は、手術室の中だけで完結しません。最後まで生活を支えるのはご家族です。熟慮ください。
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