夏になると、犬用の冷却マットを使う家庭が増えます。「本当に体温が下がるの?」「エアコンがあれば必要ないのでは?」と思う方もいるでしょう。
結論からいうと、市販の冷却マットだけで犬の体温を大きく下げることは期待できません。しかし、犬が暑いと感じたときに、自分で少し冷たい場所を選べるという意味があります。
執筆:圓尾 拓也(腫瘍科認定医・獣医学博士)
冷却マットの効果は限定的
一般的なジェル入り冷却マットは、冷気を作り続ける製品ではありません。犬が乗ると、犬の体からマットへ熱が移動するため、最初はひんやり感じます。
ただし、犬が長く乗っているとマットも温まり、犬との温度差が小さくなるため、冷却効果は弱くなります。
以前、重さ300g、温度25℃の冷却マットに10kgの犬が乗った場合を計算すると、犬の体温低下に換算した理論値は約0.4℃でした。
→ 重さ300gの冷却マットで、10kgの犬の体温は何℃下がる?
実際には全身が密着するわけではなく、体温を一定に保つ働きもあるため、深部体温がそのまま0.4℃下がるとは限りません。
冷却マットは、犬の体を強く冷やす装置ではなく、接触している部分の熱を一時的に逃がす補助用品と考えましょう。
冷却マットを使うことが暑さのサイン
冷却効果が小さいからといって、意味がないわけではありません。
冷却マットを置くことで、犬はベッド、床、冷却マットなどから過ごしやすい場所を自分で選べます。
普段は使わない犬が暑い日に自分から乗る、胸やお腹を密着させる、冷たい床とマットを行き来する場合は、熱を逃がしたがっている可能性があります。
特に、冷却マットからなかなか離れない場合は、「マットが効いているから安心」ではなく、室内が暑くないか確認してください。
冷却マットを使ったら室温を確認
エアコンの設定温度と、犬が実際に過ごしている場所の室温は同じとは限りません。窓からの日差しや建物の断熱性によって、床付近やケージ内が予想以上に暑くなることがあります。
→ 犬の夏の留守番、エアコンは何度?つけっぱなしの室温・湿度管理
犬が冷却マットを頻繁に使う場合は、床付近に温湿度計を置き、室温と湿度を確認しましょう。暑い場合は、エアコンの設定を下げる、除湿する、カーテンで日差しを遮るなど、環境そのものを調整する必要があります。
ただし、冷却マットを使わないから暑くないとは限りません。感触や滑りやすさを嫌って使わない犬もいます。
冷却マットはエアコンの代わりではありません。犬が暑いときに涼しい場所を選べるようにし、その行動から室温を見直すきっかけにするものです。
→ 犬の熱中症の症状と応急処置
冷却マットを使っているからエアコンは不要なのではなく、冷却マットを使っている姿が、エアコンを調整するサインになることがあります。