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執筆:圓尾 拓也(腫瘍科認定医・獣医学博士)
犬や猫のしこりや腫瘍が見つかったとき、「全部調べた方が安心では?」と思うかもしれません。もちろん、検査によって得られる情報は大切です。しかし、腫瘍診療では「できる検査を全部行うこと」が目的ではありません。
検査は「次の行動」を決めるために行う
検査は情報を集めるためだけに行うものではありません。
手術をするのか。
抗がん剤を使うのか。
放射線治療を行うのか。
経過観察にするのか。
検査の結果によって次の行動が変わるとき、その検査には大きな価値があります。
一方で、結果が分かっても治療方針が変わらない場合には、負担や費用の大きい検査を無理に行わないこともあります。手術ができず化学療法も効かないために放射線治療を行い、これ以上何もできない場合には腫瘍が大きくなったと分かってもすることがないので、負担になるCT検査をお勧めしませんでした。
腫瘍によって必要な検査は違う
腫瘍診療では、すべての腫瘍に同じ検査を行うわけではありません。例えば鼻腔腫瘍では、鼻の奥にどこまで広がっているかを確認することが治療計画に直結します。そのためCT検査が重要になることがあります。
一方で、肥満細胞腫ではリンパ節や腹部臓器の評価が重要になることがありますが、肺転移は比較的少ないため、すべての症例で胸部CTを重視するわけではありません。また、脂肪腫のような良性腫瘍が強く疑われる場合には、全身の転移検査を行わず経過観察を選ぶこともあります。
必要な検査は、腫瘍の種類や発生部位によって変わります。
高齢だからこそ考える「どこまで調べるか」
高齢の犬や猫であっても、検査によって病気の全体像を詳しく把握できます。しかし、詳しく分かったとしても積極的な治療を希望しない場合には、必要最小限の検査も正当化されます。
「検査の結果で治療方針が変わるのか」という視点は、高齢の子ほど重視します。
麻酔が不安な場合
CT検査や生検では、鎮静や全身麻酔が必要になることがあります。麻酔が不安だからといって、必要な検査を最初から諦める必要はありません。
血液検査やレントゲン検査、必要に応じた心臓の評価を行うことで、麻酔のリスクを事前に把握できます。麻酔前検査は、「麻酔ができるかどうか」を判断するためだけではなく、より安全に検査を行うための準備でもあります。
「全部調べる」より「必要な検査を選ぶ」
腫瘍診療では、検査の数が多いほど良いとは限りません。治療方針を決める、検査によって判断が変わる項目に絞って実施します。
「何ができるか」ではなく、「何が必要か」。それを一緒に考えることが、腫瘍診療における検査の第一歩だと考えています。
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