ミルタザピンは、犬や猫の食欲が落ちたときに使われることがある薬です。もともとは人の薬ですが、動物医療では食欲を出す目的や、吐き気をやわらげる目的で使われます。
どんなときに使うのか
ミルタザピンは、慢性腎臓病、消化器の病気、膵炎、肝臓の病気、腫瘍、抗がん剤治療中の食欲低下などで使われることがあります。
「食欲を出す薬」として使われることが多いですが、吐き気や気持ち悪さが食欲低下の背景にある場合にも役立つことがあります。ただし、原因を調べずに食欲だけを無理に上げる薬ではありません。食べない理由が、痛みなのか、吐き気なのか、腎臓病なのか、腫瘍なのかを考えながら使います。
猫ではよく使われる薬
猫では、ミルタザピンが食欲刺激薬として使われることがあります。特に慢性腎臓病や腫瘍、慢性の消化器疾患などで、食欲が落ちたり体重が減ったりしているときに検討されます。
猫では薬の代謝が犬よりゆっくりなことがあり、高齢猫、腎臓病の猫、肝臓に問題がある猫では薬が体に残りやすくなります。そのため、量や投与間隔には注意が必要です。
以前は比較的多めの量を数日おきに使うこともありましたが、現在は副作用を避けるため、少量から使う考え方が一般的です。
犬でも使うことがある
犬でも、病気に伴う食欲低下や吐き気の補助としてミルタザピンを使うことがあります。犬では猫より薬が早く抜けるため、使い方は猫とは少し違います。
ただし、犬では食欲増進薬としてカプロモレリンなど別の選択肢が使われることもあります。ミルタザピンが合う場合もありますが、すべての犬で同じように効くわけではありません。
期待できる効果
期待する効果は、食欲が戻ること、食べる量が増えること、体重減少を抑えることです。吐き気が関係している場合には、気持ち悪さが軽くなり、結果として食べやすくなることもあります。
効果が出ると、急に食べ始めることがあります。ただし、食べたから病気が治ったわけではありません。食欲が戻ったことをきっかけに、栄養状態を立て直し、原因となる病気の治療につなげる薬と考えます。
注意したい副作用
ミルタザピンで注意したい副作用には、鳴き続ける、そわそわする、興奮する、ふらつく、眠そうにする、よだれが出る、吐く、震える、心拍が速くなる、といった変化があります。
猫では、特に「よく鳴く」「落ち着かない」「いつもと様子が違う」という形で気づかれることがあります。多くは薬の量が多いときや、体から薬が抜けにくいときに起こりやすくなります。
犬では、眠気やふらつきが目立つことがあります。
併用薬に注意が必要
ミルタザピンは、他の薬との組み合わせに注意が必要です。特に、セロトニンに関わる薬と一緒に使うと、まれにセロトニン症候群という重い副作用につながることがあります。
強い興奮、震え、発熱、ふらつき、下痢、呼吸が速い、意識がぼんやりするなどが見られる場合は、早めの受診が必要です。
また、犬では人用の口の中で溶けるタイプの薬に、キシリトールが含まれていることがあります。キシリトールは犬に危険です。人用の薬を自己判断で使うことは避けてください。
食べない原因を見落とさない
ミルタザピンは便利な薬ですが、「食べない原因」を消す薬ではありません。腸閉塞、強い痛み、重い感染症、腫瘍の進行、腎不全や肝不全などが背景にある場合、食欲だけを刺激しても十分ではありません。
薬で少し食べるようになっても、体重が減り続ける、吐く、下痢をする、元気がない、黄疸がある、ぐったりしている場合には、原因の確認が必要です。
最後に
ミルタザピンは、犬や猫が食べられないときに助けになることがある薬です。特に猫では、食欲低下が続くと体への負担が大きくなるため、早めに食べるきっかけを作る意味があります。
ただし、効く薬ほど使い方が大切です。どの病気に対して使うのか、どれくらい食べられるようになったら効果ありと考えるのか、副作用が出たらどうするのか。そこを確認しながら、その犬や猫に合った使い方を考えていきます。