ホーム > 腫瘍まとめ > 治療 > 放射線治療 > 放射線治療の対象:どんな子が治療に適しているのか?
執筆:圓尾 拓也(腫瘍科認定医・獣医学博士)
放射線治療は、「他に手がない時の最後の手段」というイメージがあります。放射線治療施設が断ると希望がなくなるので、無理して麻酔をする、という状態もないわけではありません。しかし、がんの種類や場所によっては、手術以上に効果的であったり、手術と組み合わせることで完治の可能性をぐんと高めたりできる「戦略的な選択肢」という場合もあります。
具体的にどのようなケースで検討されるべきか、大きく3つのパターンに分けて解説します。
1. 手術が難しい「場所」にあるがん
構造が複雑で、メスを入れることで機能や見た目が大きく損なわれる場所に有効です。
• 鼻の中(鼻腔内腫瘍): 腺がんや扁平上皮がんなど。構造が複雑で手術が困難なため、放射線が第一選択となります。
• 脳の腫瘍: 髄膜腫やグリオーマなど。頭蓋骨を開ける手術のリスクが高い場合でも、ピンポイントで狙い撃ちが可能です。
• 口の中(口腔内腫瘍): メラノーマや扁平上皮がんなど。顎の骨を大きく削る手術を避けたい場合や、手術後に再発を防ぐために行います。
2. 手術後の「仕上げ(バックアップ)」
手術で目に見える腫瘍は取れたものの、検査の結果、細胞レベルで取り残し(マージンポジティブ)が疑われる場合です。
• 肥満細胞腫: 正常組織に根を張るように広がるため、取り切れない場合に再発を防ぎます。
• 軟部組織肉腫: 足の先など、大きく切除できない場所での再発防止に非常に力を発揮します。
3. 痛みや苦痛を取り除く「緩和ケア」
「治すこと」ではなく、残された時間の「質(QOL)」を上げることが目的です。
• 骨の腫瘍(骨肉腫など): 骨のがんが引き起こす激しい痛みは、鎮痛剤だけでは抑えきれないことがあります。放射線をあてることで、痛みを劇的に和らげ、再び歩けるようになる子もいます。
• 巨大な腫瘍: 出血や圧迫で苦しい場合、サイズを縮小させることで楽に過ごせるようになります。
具体的な「適応疾患」リスト
専門施設をご紹介する代表的な疾患です。
頭頸部腫瘍:重要臓器があるため、完全切除(腫瘍周囲の正常組織を含めた手術)は難しいので放射線治療する代表的部位。脳腫瘍(髄膜腫、グリオーマ、下垂体腫瘍)、口腔腫瘍(メラノーマ、扁平上皮癌、線維肉腫)、鼻腔腫瘍(リンパ腫も)、唾液腺腫瘍、甲状腺腫瘍、頸部ケモデクトーマなど
前胸部:前縦隔腫瘍(胸腺腫、リンパ腫)、心基底部腫瘍(異所性甲状腺がん、ケモデクトーマ、血管肉腫)など
後腹膜:副腎腫瘍など
骨盤腔内:膀胱移行上皮癌、肛門嚢腺癌など
体表/四肢:肥満細胞腫、軟部組織肉腫、組織球肉腫、
その他:スコティッシュフォールドの骨軟骨異形成症(Osteochondrodysplasia)、脾臓照射(IMHAなどの脾腫)
3頭中2頭の現実
放射線治療は魔法ではありません。効果が出る確率は「3頭中2頭(60~70%)」。だからこそ、事前のCT検査などで「この子に放射線が必要か」「どれくらいのリターンがあるか」を見分けます。
「手術を勧められたけれど、うちの子には負担が大きすぎるのでは?」と悩んでいるなら、一度放射線という選択肢を検討してみてください。それは、愛犬・愛猫に「穏やかな時間を巻き戻してあげる」ための有効な手段かもしれません。
放射線治療:切除ができないときだけ?
放射線治療適応:こんな子がいいです
放射線治療効果:小さくならない?
放射線治療の副作用:意外と少ないです
放射線治療の麻酔:こんなことに注意
放射線治療スケジュール:こんな感じです
放射線治療の体調管理:お願いしていました
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獣医師 圓尾真理
獣医師 圓尾拓也
日本獣医がん学会 腫瘍科認定医1種(I種)
放射線取扱主任者1種
博士(獣医学)
エビデンスにもとづいた情報発信に努めます。
