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執筆:圓尾 拓也(腫瘍科認定医・獣医学博士)
高濃度ビタミンC点滴は、犬や猫のがん治療で補助的に使われることがある治療です。ビタミンCを栄養として補うというより、点滴で高い血中濃度にすることで、腫瘍細胞への作用や炎症の軽減を期待する考え方です。
ただし、現時点では、犬や猫のがんに対して標準治療として確立された治療ではありません。手術、抗がん剤、放射線治療、分子標的薬のように、治療効果がはっきり示されているものとは分けて考える必要があります。
なぜ点滴で行うのか
ビタミンCは口から飲んでも、腸から吸収できる量に限界があります。たくさん飲ませても、血液中の濃度は大きく上がりにくく、余った分は尿へ出ていすきます。
一方、点滴で血管内に入れると、口から飲む場合とは違う高い血中濃度に達します。この高濃度の状態で、腫瘍細胞に酸化ストレスを与える可能性がある、というのが高濃度ビタミンC点滴の基本的な考え方です。
期待されること
期待されることは、腫瘍を直接小さくすることだけではありません。むしろ実際の臨床では、食欲、元気、痛み、炎症、だるさなど、生活の質を支える目的で検討されることが多いと思います。
がんそのものを治す治療というより、標準治療に加える補助療法、あるいは積極的な治療が難しい場合の緩和的な選択肢として考える方が現実的です。
標準治療の代わりにはならない
大切なのは、高濃度ビタミンC点滴を「標準治療の代わり」と考えないことです。
手術で取り切れる腫瘍、抗がん剤が効きやすいリンパ腫、放射線治療が有効な局所腫瘍などでは、まず標準的な治療選択肢を検討します。高濃度ビタミンC点滴だけに期待して、必要な治療が遅れてしまうと、かえって選択肢を狭めることがあります。
注意が必要な犬や猫
比較的安全に行われることが多い治療ですが、すべての犬や猫に使えるわけではありません。
腎臓病がある場合、心臓病がある場合、胸水や腹水がある場合、脱水がある場合、シュウ酸カルシウム結石の既往がある場合には注意が必要です。点滴そのものが体への負担になることもあります。
また、猫では使用する製剤の添加物にも注意が必要です。人で使われる製剤をそのまま安全に使えるとは限りません。
行うなら目的を決めて
高濃度ビタミンC点滴を行うなら、「何を期待するのか」を決めておきませんか。
腫瘍の進行を抑えたいのか。抗がん剤治療中の体調を支えたいのか。食欲や元気を保ちたいのか。痛みや炎症を少しでも軽くしたいのか。目的があいまいなまま続けると、効果があるのかどうか判断できなくなります。
まとめ
高濃度ビタミンC点滴は、犬や猫のがん治療で補助的に検討されることがあります。生活の質を支える目的では、選択肢の一つになることがあります。
ただし、がんを治す標準治療ではありません。標準治療の代わりにするのではなく、その犬や猫の状態、腫瘍の種類、腎臓や心臓の状態、治療の目的を確認したうえで、無理のない範囲で考える治療だと思います。
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